女王様のご生還 VOL.156 中村うさぎ

ネットが普及してブログを書く人が急増した。

ブログとエッセイの違いがよくわからないが、まぁ、同じようなものと考えていいだろう。

それにしても、世の中にはこんなにも文章を書きたい人がいるのか、と驚かずにはいられない。

しかも、よくネタが尽きないなと感心する。

私なんか週に一度のエッセイだけでも書くことなくて悩みまくるのにね、

やはり私は物書きに向いてないのかもしれない。



私がやっている「ドラクエⅩ」というゲームの世界にも、ブロガーたちが大勢いる。

有名な人気ブロガーもいて、私もその人とフレンドだったりするので(あくまでゲーム上でね)半分義理で読んだこともあるのだが、正直、面白くも何ともない。

「こんな文章と内容で人気ブロガーなんだぁ~」というのが率直な感想である。

プロじゃないからべつにいいんだけど、その浅薄な内容と凡庸な視点には驚きも発見もないし、稚拙な文章力と語彙力に至っては読むのが苦痛になるほどだ。

しかも本人が有名人気取りで調子に乗ってるのが何ともむず痒くて耐えられない。



しかし、これはもしかすると私の嫉妬なのかもしれない。

いや、間違いなく嫉妬だろう。

私は何故、彼ら彼女らに嫉妬するんだろうか?

ドラクエ内では私は有名でも何でもない地味なプレイヤーだ。

ツイッターにドラクエ専用アカウントも持ってるが、フォロワー数は大したことない。

人気ブロガーたちのフォロワー数とは桁が違う。

それが悔しいのだろうか?

「プロの私よりヘタクソなおまえらがチヤホヤされてるのが許せーん!」という嫉妬なのだとしたら、私もつくづく手に負えない自己顕示欲とナルシシズムの塊だ。



そんなに悔しいのなら自分でブログを書けばいいじゃないか、という意見もあろう。

そのとおりだ。

だが私は仕事以外で文章書くのなんて面倒くさくて真っ平だし、どうせまたネタに詰まって悩みまくるんだろうと思うと、とてもじゃないがそんな気になれない。

さらに、満を持して始めたブログにまったく反応がなかったらどうしようという不安もある。

プロなのに素人のブロガーに負けるなんて、こんな恥ずかしいことはなかろう。



要するに、私は臆病者で、自分に自信がないのである。

だから、大した才能もないのに自信満々でブログを書き、しかもチヤホヤされていい気になってる人たちに鬱屈した感情を抱いている。

ネットの掲示板などで有名人を叩いている人たちも、私のこの感情と大差ない「過剰な自己顕示欲→劣等感→嫉妬→怒り」の渦の中で生きてるのだろう。

ただ、私は他人を攻撃することでその鬱屈が晴らせるとは思わないけどな。

そんなことしたら自分がますます惨めになるだけじゃん。



我々の自己顕示欲がこんなにも肥大した原因は、間違いなくメディアであろう。

「有名になりたいから人を殺した」という動機を述べる殺人犯に世間は震撼したりするが、殺人は極端な手段だとしても、その「有名になりたい」欲望には身に覚えがあるはずだ。

新聞や雑誌に載りたい、TVに出たい、と望む人は少なくない。

新聞、雑誌、TVといったメディアは、つい昨日までごくごく平凡な一般人だった者を一躍有名にするツールとして、我々の自己顕示欲を刺激した。

そして、そこにまたネットというメディアが加わったのだ。

誰もが簡単に「有名人」になれる時代。

何のコネもない普通の一般人がyoutuberやブロガーとなって賞賛や喝采を浴びる。

それはすごく素晴らしいことだと私も思っていたのだが、やはりどんな現象にも暗黒面はある。

誰もが平等に「有名人」になれる時代になったからこそ、「有名人」になり損ねた人々の鬱屈と劣等感と嫉妬は、従来よりも根深いものとなるからだ。

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