女王様のご生還 VOL.45 中村うさぎ

先日、私の本をずっと読んでくださってる方から「昔はあなたの本で大笑いしてたけど、最近はあまり笑える話がないね」と言われた。

うーむ、確かに……と思い、その原因を考えてみたが、ひとつには昔のようなバカな事件が日常で起きなくなったこともある。

まずは買い物依存症などの逸脱行為が激減したので、その手のネタがなくなったこと。依存症が治ったのか、前借りをさせてくれる出版社どころか仕事そのものがなくなったせいか、あるいは足が悪くなって出歩けなくなったからか、明確な原因は不明だが、とにかく買い物も夜遊びもしなくなった。よって、みんなに笑っていただけるような事件が起こらなくなったわけだ。



あとは、私がある時期からずっと軽い鬱状態であること。バカなことばかりして周囲を呆れさせたり笑わせたりしてた頃は、たぶん躁状態だったのだと思う。常にテンション高かったしな。

酔っ払ってバーのカウンターで裸踊りしたり、友人宅で尻の穴を見せようとしてテーブルの角で頭を打ったり、ああいったバカ騒ぎはもうできない。

相変わらずウンコはちょいちょい漏らしてるものの、例の病気のせいで一時期ひとりでトイレに行けない身体になってからというもの、ウンコ漏らしは私にとって「事件」ではなくなってしまった。だから、特に書き記すほど面白い話でもない。昔は「ウンコ漏らす」ことが恥ずかしかったので笑えたわけだが、今はウンコ漏らしても「あら、やっちゃった」くらいにしか感じない。慣れとは恐ろしいものである。



そうそう、それで思い出したが、ひとりでトイレに行けない時期にはいろいろと苦労した。当時は自宅で車椅子生活だったのだが、トイレの前に段差があって、車椅子では上がれない。夫がいれば介助してもらって何とかトイレに行けるのだが、彼が出掛けてたり寝てたりすると、もうどうしようもない。

一応オムツはしてるのだが、成人用のオムツでも尿の量が多いと横からこぼれてしまうので、車椅子に座ったままオシッコ我慢して悶絶することがたびたびあった。

で、この時に私が考案したのが、ゴミ袋を利用した尿漏れ防止カバーである。



まずは大きなサイズのゴミ袋を用意し、下部の両サイドに穴を開け、そこに足を入れる。それを腿まで引っ張り上げ、余った上部をオムツの腹のゴムにたくし込む。

これを穿いておけば、たとえオムツから溢れ出るほどのオシッコをしても、尿はゴミ袋に溜まるので、車椅子や衣服がビチョピチョにならなくて済む、という寸法だ。

http://bit.ly/2lay1BG



素晴らしい!

私はこれを、平野レミの「レミパン」にあやかって「うさパン」と名づけ、得意げにツイッターで公表したところ、フォロワーの皆さんに喜んでいただけた。

久々にお笑いネタを提供できて嬉しい限りであった。

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