■米中貿易戦争のなかで加速した日米貿易交渉・人手不足と人材派遣業界
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●1年という異例の短さでTPP水準の決着を受け入れたトランプ政権
筆者は『今こそ「米中」を呑み込め』(2019年3月刊)で「アメリカは2019年夏から2020年の大統領選に向けた戦いが本格化する。となるとトランプ大統領はもちろんのこと、トランプ政権も外交に注ぐエネルギーをかなり削がれてしまう。逆にいえば、日本もTAG交渉で2019年夏まで持ち堪えれば譲歩しなくて済む。この時間軸という点からも日本がTAG交渉でアメリカに負けるはずがない」と書きました。
TAG(物品貿易協定)とは新しい日米貿易協定のことで、安倍晋三首相とトランプ大統領は8月25日、イタリア・ビアリッツのG7に合わせて首脳会談を行い、新しい日米貿易協定での基本合意に達しました。筆者の予想通りの結果となったわけで、以下が主な合意内容です。
日本側は米国産牛肉にかけている38.5%の関税を段階的に9%まで下げる、ソーセージなどに使う低価格品の米国産豚肉の関税は1キロ482円を最終的に50円とする、高価格品の米国産豚肉の関税は4.3%から最終的にゼロにする、アメリカ側は日本産牛肉に3000トンの無税枠を新設する、自動車以外の日本の工業品では関税を撤廃する。
ここで特に重要なのは米国産の牛肉や豚肉の関税の引き下げをTPP(環太平洋経済連携協定)と同じ水準にしたことです。アメリカはTPPから抜けたけれども、TPPだけでなくEUとの日欧EPA(経済連携協定)もすでに発効していて、TPP加盟国と日欧EPA加盟国は牛肉や豚肉の日本に輸出するときの関税が下がっていきます。一方、アメリカはTPPに加盟していないため、米国産の牛肉や豚肉の日本での関税は高止まりしたままです。となると日本での米国産の牛肉や豚肉の需要が落ちるのはいうまでもありません。そのことにアメリカの農家は危機感と不満を募らせていました。