『ウルトラマン』Blu-ray BOX紹介

●作品世界に飛びこんだ気分になれる圧巻のフィルムの情報量を再現

 日本の映像文化を刷新した『ウルトラマン』がブルーレイ化!

 1966年に最初期のカラーTV映画として制作された原版は、16mmフィルムながら圧巻の情報量が満載。ブルーレイ用原版は<HD Remaster 2.0>と名づけられて放送用マスターをさらに進化させたものとなり、空気感と臨場感が当時のスタッフが意図したまま再現されている。

 こうした「TV映画」の持ち味を高いクオリティで伝えるために、製作の円谷プロでは<円谷光学研究所>を発足。2年にわたって試行を繰り替えした。まず最大限の情報を引き出すため、撮影に使われたイーストマン・コダック社のオリジナルネガ原版から同社の16mmインターミディエイトプリントを採用して画調のマッチした「マスターポジ」を作成。「HDテレシネ工程」ではフレームをギリギリまでとって、DVD版より広い面積の情報を1コマずつスキャンしている。

 さらに「カラーコレクション(カラコレ)工程」では色調、明度、階調などを全シリーズにわたって統一。ポイントは「グレイン調整」で、粒状性のあるフィルムの持ち味を消さないよう、ギリギリのバランスで調整が行われた。

 放送用マスターからさらにフィルム特有のゴミや傷を修復する「パラ消し」を徹底し、フィルムの経年変化やシャッターエラーに至るまで、入念に異物感を低減した。映像に関するポストプロダクション作業は『総天然色ウルトラQ』と同じ東映ラボ・テックが担当している。

 音声もリニアPCM収録を前提に徹底したリマスターが行われた。放送時の<オリジナル版モノラル>に加え、スワラプロが現存する音素材を駆使して新たに<2013 Remix Stereo>を作成。高周波数帯の「ヒスノイズ」を除去して音質を向上させた。DVDリリース時に5.1ch音声が制作された回はそれも同時収録されている。

 最終段階の映像圧縮はパナソニックハリウッド研究所が独自に開発した最高品質のエンコーダー「MPEG-4 AVC High Profile」を採用し、美麗なマスターを忠実再生可能なブルーレイに仕上がった。

 さらなる高品位となった『ウルトラマン』。注目のポイントはフィルム撮影の特徴である「光のデリケートさが伝わる階調表現」にある。

 ウルトラマンの銀色のボディは光が複雑な形状に合わせて反射する情報量が増え、ヒーローとしての神秘性を際だたせている。怪獣も表皮のディテールが豊かさに加え、少しずつ色合いや明度の異なる塗料を重ねた丁寧な仕上げが楽しめるようになった。

 全方位的に情報の質と量が豊かになったことで、作品世界との距離が縮まる感じがする良質なブルーレイ。デジタル最新技術で再現されたフィルムのもつアナログな味わいを、ぜひ堪能していただきたい。

【2013年4月26日脱稿】初出:「月刊HiVi(ハイヴィ)」(ステレオサウンド刊)