名古屋を本拠地とする「猫町倶楽部」という読書サークルがある。
病気をする前だからもう10年くらい昔のこと、私はそのサークルの読書会にゲストとして招かれ、それ以来、何度か読書会や懇親会に参加して親交を深めた。
その後しばらく疎遠になっていたのだが、このたび久々にお声がかかり、「猫町倶楽部」でカフカの「城」を読む読書会を主催することとなった。
カフカの「城」を選んだ理由は、3年ほど前にこの作品を読み解くセミナーを佐藤優氏と一緒にやっていたのだがコロナで中断してしまい、中途半端に終わったのが心残りだったからである。
また新しいメンバーで、一から「城」を読んでみたい。
そんな思いで「猫町倶楽部」さんの読書会の場を借りることにした。
月に2回、隔週の木曜日に集まってくれた皆さんとzoomでやり取りしつつ、「城」を3章ずつ読み進めていく。
長編なので読み終わるまでに8回の読書会が必要だ。
隔週だから4ヶ月。
年をまたいでしまうな。
こんな計画を立てるとは、自分が来年も生きているという心づもりがあるからだろう。
いつ死ぬかわからないし、べつにいつ死んでもいいやと思いつつ、気づいたら来年の計画まで立てている。
なんだかんだ言って、私にとって「死」はやはりどこか遠い存在なのだと思い知った。
前回だって前触れもなく突然来たし、おそらく次回もそうだろう。
いつ来るかわからない来客の動向をあれこれ考えても意味がない。
来る時は、来る。そういうものなのだ。
そんな風に考えて、とりあえず生きてる前提で未来の計画を立てている次第である。
母を亡くしてからの父も生きるモチベーションを完全に失ってしまったらしく、二言目には「俺はあと2年で死ぬからな」と宣言する。
そんなに計画的に死ねるものかよと心の底でフフンと鼻で笑い、
「へぇ、自殺でもするつもり?」
「自殺はしないよ」
「じゃあ、どうやって死期をコントロールするのよ?人間は自殺でもしない限り、自分の思いどおりには死ねないよ」
「2年経ったら、俺は飯を食うのをやめる」
「はぁ?餓死するってこと?」
「そうだ」
「無理だね。お父さんが思ってるほど餓死ってのは簡単じゃないよ。賭けてもいいけど、絶対に餓えの苦しさに耐えかねて何か食べちゃうに決まってるね」
「そんな事はない!」
自信満々にきっぱりと言い放つ父であった。
この人、バカなのか?それとも幼稚なのか?
人間には生存本能ってのがあって、それは理性とか意志とかそんなものよりずっとずっと強いんだよ!
人間は絶対に本能には勝てない。
それを無理やり抑え込み、意志の力で餓死しようなんて、おまえは即身仏を目指す坊さんかよ!