BDアニメ New Frontier 第12回『伝説巨神イデオン』劇場版(接触編、発動編)

※2011年5月発売号の原稿です。

【惹句】無限力をめぐって激戦が展開する宇宙最大規模のSFアニメ、超高画質でリリース!

 無限力を秘める謎の存在《イデ》と発動の鍵を握る巨大な人型メカ《イデオン》をめぐり、異星人同士の2つの種族が星から星へと果てしなき戦闘を繰り広げる。富野由悠季監督の『伝説巨神イデオン』は、壮大なスケール感とメカアクション、そして極限状態における人間くさいドラマがぶつかって感動を生むSFアニメの傑作である。

 TVシリーズは『機動戦士ガンダム』の直後、1980年の作品だが、3体合体メカのイデオンの玩具の売り上げ不振により、第39話で打ち切られてしまった。残り4話分は先行して脚本・絵コンテまで完成していたため、最終パートは劇場版『THE IDEON』として制作が続行。1982年7月に、TVシリーズをまとめた「接触編」と新作中心の「発動編」が「ダブルリリース」という珍しい形式で同時公開された。大スクリーン用にパワーアップした作画、美術、撮影処理は予想を上回るクライマックスの大決戦と惨劇を盛りあげ、そのパワーに当時のアニメは圧倒された。

 Blu-ray化も公開時の体裁を踏襲して2本組みとなっている。今回は過去のビデオグラムと違い、松竹マークやクレジット類が劇場公開時のオリジナルに近づけてある点も、非常に貴重だ。そして驚嘆すべきは、その高画質である。TVシリーズは16ミリフィルムで撮影されていたため、「発動編」の途中まではブローアップ(拡大)版で、粒子が粗い。それでもリマスターによりきれいに見えるが、待望の完全新作部分に来ると急に画面がビシッと引きしまり、まるでセル画そのものを見ているかのような鮮明さに変わる。そのグレードアップの衝撃から、「ついに本当の最終回が見られる」という当時の感動がよみがえるのだ。

 同時期の劇場アニメより細やかに見えるのには秘密がある。横長のビスタサイズでは画面の天地をマスクするため膜面積が小さくなってしまうが、本作はTVと同じ4:3のスタンダードのため、フィルムの粒子数をフルに使っているのだ。その密度感がアナログ時代特有の色合いを引き立てている。劇場版は富野由悠季は総監督で、監督は後に『ダーティペア』や『SAMURAI 7』を手がける滝沢敏文が担当。独特の情感あふれる透過光や画面の一部を暗くするパラがけなどの撮影処理が多用され、アナログ独自のつややかさも鮮やかに再生されていることも、実に嬉しい。

 初回限定特典は2010年の座談会映像のみで解説書がないなど残念な部分もあるが、記念碑的作品の発色と情報量が存分に引き出せる、ファン必携のBlu-ray Discと言えよう。

【2011年4月27日脱稿】初出:「月刊HiVi(ハイヴィ)」(ステレオサウンド刊)