「ミシュラン」と「ゴーエミヨ」料理展望7(山本益博)

<1、3つ星は料理人の野望>

1900年に創刊した「ミシュラン・フランス」ガイドは、二つの世界大戦と1921年を除いて毎年刊行され、それが2009年で100冊目になり、2017年で108冊になった。

その2017年版は2月中旬に発売になり、新しい3つ星として1軒サヴォワ地方COURCHEVELの「LE1947 」が選ばれた。

創刊時は、パリから地方に車で出かける旅行者のためのホテルとレストランのガイドブックだったのが、20年以上毎年版を改めてゆくうちに、美味しい料理を提供するレストランに星印を与えるようになり、その星がいつしか料理人の目標となって、3つ星に輝くレストランのシェフは、フランス最高の栄誉に浴すると評価されるようになっていった。第2次世界大戦後になると、「ミシュラン」の星はいよいよ権威を増してゆき、“3つ星”はついには全料理人の野望となった。

「ミシュラン」は匿名による調査をモットーにしていて、それが「ミシュラン」の秘密主義をいっそう煽ることにもなっていった。フランスでは、いまでも食事をして勘定をすませてから、身分証明書を示して、はじめて調査員であることを明かし、厨房と手洗いを拝見となるらしい。清潔な厨房からしか美味しい料理は生まれないとの信念があるからだ。

前もって名乗らずに食事するだけであるから、覆面の秘密調査員ではなく、名乗れば顔が割れる。それでも厨房での滞在は20分と決められているそうで、その時間では、店側が慌てていることもあり、調査員の顔を覚えられることはないと、「ミシュラン」はプレスの配布資料で胸を張るが、本当だろうか。

記事の新規購入は2023/03をもって終了しました