「TOEFLとの格闘」 ハーバード留学記VOL.2 山口真由





1. 点数が伸びない

さて、先ほど3月のTOEFLのテストでは82点だったと書いた。それは確かにいい点数ではないけれど、私自身は、さほど心配していなかった。だって、アプリケーションは来年の1月くらいなんだから、1年以上の時間がある。そう思っていたのである。

TOEFLの勉強には身が入らなかった。もともと、私は社会や理科といった暗記科目が大の得意。「絶対領域」である社会や理科に対して、英語や数学などの暗記が通用しない科目は、あまり得意でもないし、好きでもなかった。加えて、仕事は忙しい。そしてなによりも私は伸びきってしまっていた。

学生時代の優秀な成績に半ば満足して、もうこれ以上勉強をするなんて嫌だと思っていた。ハーバードという新しい挑戦に挑むふりをしながら、心はずっと後ろ向きだったのである。

せっかくの休日をTOEFLという楽しくもないテストに費やす虚しさ。1回230ドル、つまり1回2万円を超える受験費用は決して安くはない。そして、どうにもせりあがってこないモチベーション。かつては、毎週のように受けられたTOEFLのテストも、少なくとも私が受けた時点では、3週間を空けて受ける必要がある。それをいいことに、月1回くらいのペースで、緩慢にTOEFLを受けながら、気づけば9月1日になっていた。

そこで、私は唖然とする。はじめに受けたTOEFLの点数が82点。その時点の私の最高点は89点。ほとんど点数が伸びていない。直近のテストの点数は、なんと83点。これだと、ほとんど成長が見られないじゃないか。

2. 焦る!!留学準備!!

なによりも私が焦ったのは、アプリケーションの締切が、私が思っていたよりもっとずっと早かったこと。なんとなく、来年の1月くらいに思ってハーバードのホームページを確認してみた9月1日のあの日、私は愕然とする。アプリケーションの締切は12月1日。ということは、たった3か月しかいないのである。

とにかく、このままではいけない!TOEFLの点数を上げなくてはいけない!このとき、私のスイッチはオンになった。そう、前もってやっておいた方がいいのは確か。だけど、人間ってそんなにうまくはいけないから。ギリギリにならないと何もできない、けれど、ギリギリになってはじめて、エンジンが入るってことだってあるのである。

まずは、問題集を変えることから。それまで、私は日本の出版社が出したTOEFLの参考書で勉強してきた。しかし、内容のみならず、テストに至るまでのガイダンスもすべて英語で実施される、国際的なテスト、それがTOEFL。ならば、世界中に参考書がやまほど出版されているはずで、そして、それを使うほうがもっとずっと合理的であろう。探してみると、出てくる出てくる。電話帳のように(もしかして、イエローページが分からない方がいらっしゃるかもしれませんが…)分厚い問題集の数々。

ネット検索をしてそのまま購入してしまうということはできたのかもしれないが、とにかく、私はネット書店よりも実物を見て買いたい派。だから、まずは仕事終わりにすっ飛んでいって大きな本屋さんで問題集を買いあさった。有楽町の有隣堂、八重洲のブックセンター、新宿のブックファースト。新しい問題集を見つけるたびに、迷わず買って解き続ける日々。

3. 私のTOEFL攻略法

問題集をいくつもこなしていくうちに、TOEFL攻略法も徐々に理解できてきた。

[ライティング]

まず、一番点数を上げやすいのはライティング。私が受験していたとき、TOEFLのライティングはエッセイを時間内に二つ仕上げるという問題だった。慣れてしまえば、問題はだいたい同じパターン。「文明によって生活が豊かになったと思うか」「インターネットによって世界は変わったか」。とにかく、自分自身の意見を”Yes”・”No”と表明してから、その理由を、”First of all,” “And secondly,” “Finally”と書き連ねていく。理由はだいたい3つ上げられれば良いだろう。

そう中身は変わったとしても、テンプレートは同じ。同じテンプレートに違う内容を流し込むだけと考えると、構成を考える時間を省略できて、その分をライティングの時間に充てることができる。

[リーディングとリスニング]

リーディングとリスニングも、問題をいくつも解いていくことが解決してくれる。TOEFLのリーディング、リスニングは、今まで私が経験してきた受験などに比べて、格段に長い。とにかく長い。それもそのはず。アメリカで授業を受けようと思ったら、1日100ページなどの半端ない量の宿題をこなさなければならず、2時間くらいの授業に耐えなくてはならないのだ。

けれども、この長さを別にすれば、概ね受験勉強で叩き込まれ来た英語と相違ない。大学受験を終えた日本人なら、英語の基礎体力が備わっているだろう。何度も繰り返しリーディングとリスニングをすることで、忘れていた基礎体力が呼び覚まされる。

さて、日本人の、そして私自身の一番の課題はスピーキングであった。

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