女王様のご生還 VOL.234 中村うさぎ

「うさぎ図書館」の方でリチャード3世を取り上げたので、こちらでは少しその補足を。



2012年にDNA鑑定された彼の遺骨から、興味深い事実がいくつか判明した。

ひとつは、かなり余談になるのだが、俳優のベネディクト・カンバーバッチがリチャード3世の子孫であると結論づけられた件である。

以来、ベネディクト・カンバーバッチを映画やドラマで見るたびにリチャード3世を思い出してしまう私であるが、カンバーバッチ自身も英国ドラマ「ホロウ・クラウン」でリチャード3世を演じており、ますます私の中で「リチャード3世=ベネディクト・カンバーバッチ」の図式が出来上がってしまった。

シェークスピアによって稀代の悪者として描かれたリチャード3世だが、はたして彼が本当に極悪人だったかどうかはともかく、容貌は金髪碧眼で脊椎側弯症を患っており、背中は歪み片腕はねじれ足を引きずって歩いていたのは確かなようだ。

で、私の脳内では、その身体にベネディクト・カンバーバッチの顔がくっついているのである。

でも、おかげでリチャード3世に対して好意的になったけどな(←単純)。

だってベネディクト・カンバーバッチはドラマ「シャーロック」以来、私の中でかなり好きな俳優のひとりだから。

ちなみに「シャーロック」で好きになった俳優はモリアーティ役のアンドリュー・スコット、逆に大嫌いになったのはワトソン役のマーティン・フリーマンだ。



さて、余談は終わり。

これから、本稿のテーマに関係するもうひとつの「リチャード3世の秘密」について。



2012年のDNA鑑定により、リチャード3世と曽祖父(母方)ジョン・オブ・ゴーントの現代の子孫たちとの間に遺伝子的な繋がりがないという衝撃的な事実が判明した。

正式な王位継承権を巡って30年も続いた薔薇戦争だが、じつはヨーク家のリチャード3世は正統の血筋ではなかったのかもしれない、というわけだ。

だがジョン・オブ・ゴーント自身の遺伝子が判明していない以上、リチャード3世ではなく「正統」と見做されている子孫の方が血筋外である可能性もあり、それによって現在の英国王室の血統にも疑義が生じてきたようだ。

もし現英国王室がジョン・オブ・ゴーントの血筋ではなく、歴代の王たちの妻の誰かがこっそり浮気して産んだ子供の血筋であったら?

充分にあり得る話だが、ここではひとまず「リチャード3世が正統な王家の血筋ではない」と仮定して話を続けよう。



リチャード3世の曽祖父ジョン・オブ・ゴーントはたぶん間違いなくエドワード3世の息子であるとされているから(これだって疑い始めたらキリがないけど)、もしリチャード3世がその遺伝子を受け継いでいないのなら、ジョン・オブ・ゴーントの妻キャサリン・スウィンフォードか、あるいはその娘ジョウン・ボーフォートか、または孫のセシリー・ネヴィル(リチャード3世の母親)の3人のうち誰かが浮気したという事になる。

キャサリン・スウィンフォードは長らくジョン・オブ・ゴーントの愛人であり、正式な妻となった時には既にジョン・オブ・ゴーントとの間に何人もの子供を産んでいた。

そのひとりがジョウン・ボーフォートである。

愛人であった彼女がこっそり浮気してジョウンを産み、何食わぬ顔でジョン・オブ・ゴーントの娘として育てた可能性はある。

ジョウンは二度結婚し、再婚相手ラルフ・ネヴィルとの間に14人の子を産んだが、そのうちのひとりがリチャード3世の母セシリー・ネヴィルだ。

リチャード3世の祖母ジョウンが浮気してたかどうかは定かではないが、母であるセシリー・ネヴィルは「レイビー城の薔薇」と呼ばれたほど美しく、ヨーク公リチャード(リチャード3世の父)と結婚した後も浮気の噂がつきまとっていた。

あくまで下世話な憶測に過ぎないが、もしリチャード3世がジョン・オブ・ゴーントの正統な血筋ではなかったとしたら、母親のセシリー・ネヴィルの浮気の線が濃厚である。

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