他人をバカにすることで生きる男たちーー②店員を怒鳴る男の尻ー自称“エリート”はストレスに弱い?

このコラムでは「あなたの真の価値を社会の窓(他者の目線)から見極める」目からウロコのコラムをお届けします。

「他人をバカにすることで生きる男たち」と題した大型連載第2弾。

今回のテーマは「店員を怒鳴る男の尻ー自称“エリートはストレスに弱い?」です。

さっそく質問です。

Q.「あなたは、ストレスが溜まっていますか?」

1.ものすごく溜まっている

2.少し溜まっている

3.あまり溜まってない

4.全く溜まってない

5.わからない

「本当はストレスが溜まっているけど、自称“エリート”は嫌だから」なんて理由で、ウソをつかぬよう。必ずあなたの状態に近い回答を選んでくださいね。

さて、結果を出せる男にあって、あなたに欠けているSOCとは何なのか? その正体を、第2秘書室で語られた「SOCが欠けている人の言動」から紹介します。

「同じマンションに住んでるってことは、人事情報で知っていました。でも、あんな瞬間を目の当たりにするとは……、いやぁ、ショックというか、恥ずかしいというか」

こう話すのは“第2秘書室”のメンバーのひとり、ミサさん、43歳です。大手金融会社の人事部ダイバーシティ課に所属しています。彼女を驚かせた“同僚”の行動とは、なんだったのでしょうか?

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ミサ「朝、新聞を取るのに下まで降りていったら、コンシェルジュの女性を大声で怒鳴ってる男性がいまして。よく見たらうちの会社の人だったんです。あわてて気付かれないように、壁に張り付きました(笑)」

カワイ「そりゃ、驚きますね。上司ですか?」

ミサ「いいえ。年は4つ上。役職は支店長です」

カワイ「支店長さんがマンションで大声上げてたら、あまりよろしくないですね。お客さんが住んでるかもしれないですし…」

ミサ「そうでしょ? そうなんですよ! 私のほうがハラハラしちゃいました。しかも、怒鳴ってる内容が、遅いだの手際が悪いのだのしょーもないことで。ああいうのは、男の更年期なんでしょうか?」

カワイ「男性にも更年期はあります。でも、それだったら会社でも部下を怒鳴りつけたりしてると思いますよ」

ミサ「じゃ、違います(笑)会社ではどちらかというと穏やで、パワハラのウワサもありません。……でも、意外とうちの会社って外に出た途端“感じ悪い星人”になっちゃう人、多いんですよね〜(笑)」

カワイ「キレる中高年ってヤツですか?」

ミサ「キレるってほどでもない。見下してるって感じかな? こないだ上司と一緒にタクシーに乗った時にも、あまりにも上から目線で驚きました。もう少し丁寧に話せばいいのに、ものすごく高圧的。反論してこない人に、暴言を吐くんです。そういうタイプって、決まって社内的に“残念な人”なんですよ。世間的にはエリートだけど、社内的にはそこそこ。『オッサン、がんばれ!』 って、こっそり突つきたくなるタイプですね(爆笑)」

カワイ 「『オッサンがんばれ!』って、言ってあげればいいじゃないですか?(苦笑)」

ミサ「そんなことしたら、私が干されます。ただでさえ、ワタクシごときが“人事部”に属してることに、嫌悪感抱いている人多いのに。絶対に言えません。男の嫉妬は恐いですよ〜。ネットで匿名でせこせこいろんな人のことディスってそうだし……。まぁ、要するにストレスが溜まってるんですよね。残念な中間管理職は、職場でも、家庭でも、大変ですから。お気の毒ですわ〜」



……これぞ“第2秘書室”。女性たちはこんな具合に、男性陣を切りまくります。時には女性上司や女性部下のことも、言いたい放題。出世とか建前とか興味のない彼女たちは、冷静に人間ウオッチしているのです。

今、「おまえごときに言われたくない!」と口を尖らせた、ア・ナ・タ!

アナタこそが、社内的に「残念な人」。ええそうです。結果を出せそうで出せない、実に残念な人です。

ほら、アナタも、実はコンビニやタクシーで、イラっとしたことあるんじゃないでしょうか?

私も先日、小銭を出すのに戸惑っていたら、後ろのビジネスマンに「チッ」と舌打ちされてしまいました。高齢者の方がまごまごしていると、眉間にシワを寄せてイライラした顔で後ろ

からプレッシャーをかける人もいます。外国人の店員さんの日本語が微妙だと、ものすごい恐い声で「ハシ!」と、平気で怒鳴りつけるのも、決まってダーク系のスーツをきちんと着た40代前後のビジネスマンです。

コンビニバイトしている学生によると、いわゆる“エリート”のクレームは、何が問題なのかわからないのが多いそうです。

・レシートを渡したら、いらねーよ、とねじりつぶす。

・お札を投げつける。

・茶髪でおでん触るな、と言われた。

・温めますか? と聞いたら「いい」というのでそのまま渡したら「なんで冷たいんだよ」と言われた。

 etc.etc.

オバさんや若い人、あるいはガテン系の人は「これこれこうなっています」と説明すれば、納得してくれるけど、中高年の人はイライラをぶつけてるだけだと嘆いていました。

中間管理職はストレスが溜まってるーー。確かにそうかもしれません。なんせ上からは「成果をあげろ!」「結果を出せ!」と叩かれ、下(=部下)からは「それ、意味あるんっすか?」と突かれる。

ちょっとでも部下に厳しくしようものなら「パワハラだ!」と抗議され、ちょっとでも残業させようものなら「ブラックだ!」と非難されます。これでは誰だって、ストレスたまりますよね。

おまけに女性部下が増えたことで、ストレスも倍増です。なんせ、会社は「女性活用だ!」「働き易い職場だ!」と耳障りのいい御託ばかり並べますが、補填要員を雇う気はさらさらない。「それ産休、それ育休」と部下は欠けるばかりで、「いったいいつになったらフルメンバーで戦えるのか」と頭をかかえながら、多忙な日常だけが繰り返される。

たまったもんじゃありません! 本当に、お気の毒です!

そんな中間管理職のストレスフルな現実は、ある「数字」にも表れています。「管理職の死亡率が5年で7割も増えている」というのです。オーマイゴッド! なんということでしょう!

30〜59歳の男性の死因および死亡前に就いていた職業のデータなどを、1980年から2005年まで縦断的に解析したところ、いわゆるストレス性の疾患である心筋梗塞や脳卒中で亡くなる人が、管理職および専門職で増えていました。

他の職種で漸減していたのに、管理職と専門職では70%も増えていたのです。70%増! ハンパなくストレスを感じている証拠です。

さらに、管理職の自殺率は、1980年から2005年の25年間で、271%も激増しています。(上記はすべて北里大学公衆衛生学部の和田耕治氏らの研究グループによる調査結果)

ストレスの多い日常は、脳や心臓の病気発症のリスクを高めます。体も心も悲鳴をあげるほどのストレスにさらされている。これが平成の“エリート”の厳しすぎる現実なのです。

ただでさえ40代は「思秋期」と呼ばれる微妙な時期です。人間にはもともと「アイデンティティー」(自己の存在証明、あるいは自分自身は社会の中でこうして生きているんだという実感、存在意義)を探索する欲求がありますが、40代になると、まるで思春期の頃のように自分探しを始めます。

・これ以上の出世は望めないかもしれない。

・これ以上、自分の能力を伸ばすことはできないかもしれない。

・これ以上、新しい仕事に取り組むことはできないかもしれない。

こんな具合に自分に限界を感じると、自分の価値に曖昧な不安が募り、その不安から脱したくて、つい自分の存在価値を周りにやたらと誇示したり、権力を振りかざしたり、視野狭窄に陥り、内向きになる。いわば人生の危機です。

そうです。この危機感で、ますますイライラが募っていくのです。

でも、実はこの危機こそが、人生の後半戦の転機です。干上がったオジさんになるか、カッコイイオヤジになるかの分かれ道。ここで上手く対処できるか否かで、その後が決まるといっても過言ではありません。

危機に遭遇している本人も、無意識にそれがわかる。

だからこそ、余計に焦り、他者への許容度も低くなってしまうというわけです。

ただし、それなりの教育も受けた“エリート”ですから、さすがに土下座させたり、わめき散らすような言動はしません。でも、いったん「イラっと仮面」が登場すると、瞬く間に「俺サマ」になりさがり、まわりからの評価もがた落ち……です。

ところが、です。これだけストレスが多い状況でも、世の中には上手くやりすごし、カッコイイオヤジになる人がいます。

上手くストレスを発散し、ストレスの元となっているストレッサーを退治し、思秋期の危機を「挑戦だ!」と受け止め乗り越える人。

これこそが「SOC」。SOCの高い人は危機をチャンスにしてしまいます。

SOCの高い人は、とにかくストレスに対処するのが上手い。いかなる危機に遭遇しても、それは『自分に対する挑戦だ』と考え、「どうにかして乗り越えてやる」と踏ん張ります。

しかも、彼らは日常のイライラ事にも、上手く対処できるのでストレスがたまりません。

たとえばコンビニの店員さんの手際が悪く、一瞬イラっとした時でも、彼らは決して怒鳴りつけたり、ぶっきらぼうな態度を取ることがありません。

攻撃したり、バカにするのは間違った対処だと瞬時に判断する。そういう態度が更なるイライラを生み、ストレスが余計にたまっていくことを知っているのです。

ですから、心の中で「時間かかってるけど、仕方がないか」と諦めたり、「大変そうね」などと店員さんに声をかけることで、イライラの対処を試みます。

すると、店員さんの方から「お待たせして申し訳ないです」なんて謝ってくれて、「いいえ、大丈夫ですよ。がんばってくださいね」なんて逆に店員さんを励ますことで、その場を上手く乗り越えてしまうのです。

もちろんときには、つい怒鳴ってしまうという態度をとることもあるでしょう。人間ですから、仕方がありません。でも、そういったときでも彼らは即座に反省し、素直に自分の行為を謝罪します。SOCの高い人は、ある意味「かわいげのある人」なのかもしれませんね。

欧米で行われた10年間の追跡調査では、SOCの高い人は低い人に比べて10年後の精神健康が良好であることも確かめられています。ストレスにその都度上手く対処するので、ストレスが溜まることが少ない分、心も体も健康でいられるのです。

さて、アナタの冒頭の質問の答えはなんでしたか?ストレスたまっていると感じているアナタ! アナタに今、必要なのは、SOCを高めるいくつかのリソースを手に入れ、上手く使う術を知ることです。

そのためには、まずは「人の振り見てわがふりなおせ」です。「オレにこれ、ないかも」「オレ、使い方、間違っていたかも」と、自己と向き合うことが肝心です。

ところがこれがなんとも難しい。自分と向き合うことを苦手する人間は、ときに無意識に手に入れたリソースの「間違いの罠」にはまっています。

おっと、言い忘れました。「オレ、ストレスたまってない!」と答えた方も、本当はたまっているのに自覚できていない場合があります。これもひとつの「間違いの罠」です。

そこで次回からは、「アナタがはまっている罠」についてお話しましょう。