■ゴーン日産会長が犯した金融商品取引法違反・ソフトバンク株とアップル株等
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●合計19億円を超える報酬にも満足できずに手を染めた不正
東京地検特捜部は11月19日、フランスのルノー・日産自動車・三菱自動車の会長を兼務するカルロス・ゴーン氏を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で逮捕しました。この容疑の内容は、2011年3月期から2015年3月期までの5年間でゴーン氏の報酬は実際には合計約99億9800万円だったのに、約49億8700万円だったという虚偽を記載した有価証券報告書を5回にわたって関東財務局に提出した、というものです。約99億9800万円から約49億8700万円を引いた約50億1100万円のうち約40億円は日産の株価に連動して受け取る報酬で、残りが海外子会社から年1億~1億5000万円受け取る報酬でした。もちろんいずれも有価証券報告書には記載されていません。
ゴーン氏の不正については、さらに日産の西川広人社長が11月19日夜に開いた記者会見で日産の投資資金の私的利用および日産の経費の私的な支出も付け加えました。これらの主なものとしては、オランダの日産の子会社がブラジル・リオデジャネイロの高級マンションとレバノン・ベイルートの高級住宅をゴーン氏に無償提供(日産の子会社が購入費、維持費、改装費など総額20億円超を負担)したことが挙げられます。
以上の不正に深く関わっていたとして日産の代表取締役であるグレッグ・ケリー氏も逮捕されました。ゴーン氏の最側近とされるケリー氏は法務部門に詳しく、弁護士を経て1988年に北米日産に入社し、2008年に日産の執行役員、2015年2月に代表取締役に就任しています。
1954年にブラジルで生まれたゴーン氏は1974年にフランスのエコール・ポリテクニークを、1978年にパリ国立高等鉱業学校をそれぞれ卒業し、ヨーロッパ最大のタイヤメーカーであるミシュランに入社しました。順調に出世し、北米ミシュラン社長を経て1996年にルノーの副社長に転じた後、1999年にルノーから派遣された先が日産でした。日産の筆頭株主だったルノーから経営危機に陥っていた日産の立て直しを託されたからですが、日産ではゴーン氏によって大胆なリストラ等が行われた結果、業績がV字回復しました。ゴーン氏は2000年に日産の社長に就き、2001年から2017年までCEO(最高経営責任者)も兼務してきました。
ゴーン氏の履歴のなかで特に指摘しておきたいのが3人のフランス大統領も卒業したエコール・ポリテクニークです。ここはグランゼコール(フランスのエリート養成機関とされる高等職業教育機関)のなかで最も高名であり入学も難しいところですから、ゴーン氏が秀才であり能力も高いのは間違いありません。ところが、グランゼコールでは人格的な教育や道徳的な教育はほとんど行われていないのです。そのため、能力があっても人格面や道徳面で問題のある学生が生み出されてしまいます。経営の腕前はいいけれども、自分の金儲けにも非常に熱心なゴーン氏もその1人でしょう。いわばゴーン氏は金儲け亡者であって、それが今回、表向きにも発覚してしまったのです。