勝つことは簡単、でも長期的な利益はそれとは別/田渕直也のトレードの科学 Vol.002



期待リターンと勝率の関係を考える

前回は、ファンダメンタルズ分析もテクニカル分析も、相場を予測するのに必ずしも有効ではなく、また短期的な運用成績は必ずしも真の実力を反映しないという話をしました。

そして、トレードにおける真の実力は、「期待リターン」によって表されるとも述べました。

長期的にトレードで成功するためには、期待リターンをプラスにするやり方、あるいは考え方を身に着けなければなりません。

期待リターンをプラスにするにはどのようなやり方があるのかという点については、それこそがこのメルマガのメインテーマなので、順を追って考えていくことにしたいと思いますが、ここでは期待リターンの概念を少し別の形に変形してみましょう。

「期待リターン(額)≒長期的な累積利益=勝率×買ったときの平均利益額-(1-勝率)×負けたときの平均損失額」

この簡単な式は、結構重要な意味をいくつも含んでいて、これからもちょくちょく顔を出すことになると思います。

さて、多くの人のトレードのやり方というのは、この式に当てはめて言うと、勝率を引き上げることに注力するものだと思います。株価が上がるか下がるか、どの銘柄を選ぶべきか、そうした予測の的中率を引き上げることで、トレードの勝率を高めていくというところにフォーカスが当たっています。

さらにいえば、人は負けることが嫌いですから、放っておけば自然と勝率にこだわるようになっていくという面もあります。

しかし、勝率を引き上げることは、期待リターンを引き上げることにつながるのでしょうか。

ここで、まず皆さんに知っておいてほしいことは、勝率を高めることは、実はちょっとしたテクニックで誰にでも簡単にできるということです。しかも、それは期待リターンを引き上げることと無関係にできます。つまり、やり方ひとつで勝率は簡単に引き上げられるけど、それだけでは本当に実力をつけたことにはならない、というわけです。

具体的な事例としては様々なものがありますが、ここでは簡単な例を一つだけ挙げておきましょう。

2000年代の前半から中ごろに、『リスク限定型』とか、『元本確保型』と呼ばれる投資信託商品が出回りました。日経平均が今後1年間で一度でもxxxx円以下に下がるようなことがなければ、比較的高い金利を受け取ってそれでおしまいという商品です。通常、xxxx円は、投資信託が設定されるときの株価から20~30%ほど低いところに決められます。

こうした商品は、理論的には勝率がかなり高くなります。しかし、勝ったときの利益は、通常の金利に何%か上乗せされたものを得るだけです。一方で、かなり低いとはいえ負ける可能性があり、しかもそのときの損失額はかなり大きくなります。(実際にこの手の商品がどういう結果を招いたかというと、2007年以降の株価下落によって大損を被る投資家が続出することになりました。)

これらの投信は、ノックイン・プットと呼ばれるデリバティブ商品が組み込まれた商品です。デリバティブの詳しい仕組みはともかくとして、そのベースとなる考え方はとても重要かつ有益なものなので、ちょっとここでデリバティブの話を簡単にしておきたいと思います。

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