「食育」という言葉がやたらブームですが、そもそも従来の食生活に食育なんて必要はなかったし、メーカーや自称専門家が方向違いの宣伝のために食育という名を利用していることにも気付けず間違った知識やノウハウを取り入れてしまう…。
食生活が豊かになっていくほど、消費者はもっと賢くならなければならないのではないか? いま、私たちが「食」に対してどのように意識しなければならないのか、どのような考えを持たなければならないのか。今それを見直さなければ、私たちの身体にはどのような運命が待ち受けることになるか分からなくなってしまいます!
日本で管理栄養士として近代栄養学に基づく仕事をした後に、薬膳の本場である中国にて国際薬膳師となり、国内外の食のプロにその本質を指導している大倉文子先生に、その「食」の本質について連載して頂きました。
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▼大倉 文子 (おおくら あやこ)
国際薬膳師、管理栄養士。大阪府出身。管理栄養士として日本国内の給食会社に勤務後、2001年より薬膳の本場中国に移り、上海中医薬大学にて薬膳と漢方を学ぶ。上海を拠点に、薬膳のセミナーの講師、田子坊のハーブ店経営など、数多くの仕事に携わる。2014年8月より日本に拠点を移す。管理栄養士や助産師など多くの職業のプロに薬膳の本質を指導している。
・公式ブログ(共同運営):「本場で学んだ薬膳の先生たちの日常ブログ」
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『ビジネス発想源 Special』の「各界発想源」にて2012年7月に連載され大きな好評を頂いた『国際薬膳師・大倉文子の「薬食論」』全5回を、noteに再掲載することになりました。この連載から、自分自身の健康管理はもちろん、会社組織の健全化のアイデアや、これから需要が急拡大する食関連ビジネスのアイデアなど、様々なヒントを見つけ出してみて下さい。
「薬食論」、最終回をどうぞ!
※[加筆] 連載当時の、読者の皆さんの質問に大倉文子先生がお答えする「Q&A」も掲載致しました!
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●国際薬膳師・大倉文子の「薬食論」
〜食を正せば、人も正せる。〜(全5回)
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【第5回】 食を正せば、人生も正せる。
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こんにちは。国際薬膳師の大倉文子です。
今回は、いよいよ最終回です。
これまでの連載を読んでいただいて、「食」に対するイメージが少しは変わったでしょうか?
薬膳は、「これを食べたらいいよ」と答えを与えません。
そして、「これは食べてはいけない」という答えも与えません。
「薬膳」と聞くと、クコの実が飾られているような漢方を使用した料理と混同する人も多いですが、特別な漢方薬を使うのが薬膳ではありません。
薬膳とは、中医学の理論に基づいて作られた食事のことを言いますので、きちんと理論に基づいていれば、日本料理でもフランス料理でも、ラーメンであってもスイーツでも、「薬膳」と言えるのです。
ただ単に漢方薬を入れただけの料理は「薬膳」ではありません。
新しい健康法や、必殺技的な食事法を求めていた方には、今回の薬膳の話を聞いて、昔の知恵の復習のような感じに思えてしまってガッカリだったかもしれません。
でも、今回の連載でお伝えした薬膳の考え方こそが、皆さんの「食」を、そして命を強くするのです。
「自分の口に入れるものを、顔の見えない他人に決めてもらう」
そんなことはもう止めないといけません。
自分が口にすべきもの、口にすべき量は、自分の身体が知っています。
とは言っても、本能のままむさぼるのではありません。
食べ物の性質を知り、選択力をつけるのが薬膳なのです。
消費者がもっと賢く「食」を選択するようになると、多くのメーカーは売りたいだけの今の体制を大きく見直さなければならなくなります。
安全性や無添加を求めるならば、「食」の便利さ・簡易さを諦める必要もありますし、なぜ安くできるのかを考えるようになるからです。
消費者が賢くならないと、企業の性質も変わらないのです。
その証拠に、最近はやたらと方向違いの「食育」という名のもとで、わけの分からない子ども向けのお遊びイベントを開いたり、メーカーの宣伝としか思えない企画も多いです。
「食育」という流行り言葉が、メーカーが作り出してきた現在の「食」の問題点の隠れ蓑として利用されている節があるのです。
本来、「食育」という言葉は必要ありませんでした。…