■オバマケア代替法案の撤回に追い込まれたトランプ政権・良品計画株等
トランプ政権は大型減税、インフラ投資、金融規制改革、エネルギー規制改革などのトランプノミクスに取り組んでいます。絶賛発売中の「長谷川慶太郎の大局を読む緊急版」の『大転換』(発行:李白社、発売:徳間書店)では、アメリカ国内はもとより国際的にも非常に大きな影響を及ぼす、このトランプノミクスについて広く深く詳述しました。全国の大手書店に並んでいますので、ぜひご一読下さい。
●共和党内の強硬派と穏健派がともにオバマケア代替法案を厳しく批判
トランプ政権は3月24日にオバマケア(医療保険制度改革法)代替法案の撤回を決めました。すなわち、アメリカ連邦議会下院本会議での代替法案採決を見送ったのです。下院では目下、与党の共和党が237議席、野党の民主党が193議席を占めていて、代替法案を可決するには過半数の216票が必要になります。ところが、30人近い共和党下院議員が代替法案に反対すると予想されたため、過半数の賛成を得るのが無理な情勢となって、代替法案の撤回に至ったのでした。下院本会議で採決されないままなら代替法案は事実上の廃案になります。
オバマケアは無保険者を減らすためにオバマ前政権が2010年3月に成立させた法律です。これによって2014年からアメリカ国民には保険への加入が義務付けられ、新たに2000万人以上が保険に加入しました。一方、共和党は、保険加入を義務化し政府の補助金を投入するオバマケアを強く批判して、その撤廃を求めてきました。トランプ氏も大統領選で主要な公約の1つとして「オバマケアを撤廃し新たな制度に置き換える」と訴えてきたのです。
昨年の大統領選と上下両院選の結果、トランプ政権が誕生し上下両院とも共和党が多数を占めました。さっそく今年1月には上下両院において「オバマケアの撤廃」を決議したのですが、これでトランプ大統領と共和党議会指導部はオバマケア代替法案が容易に成立すると判断し、この代替法案を立法化が必要なトランプ政権の公約のなかで最初に議会採決にかけることにしたのでした。
オバマケア代替法案には、保険加入の義務化をなくし政府の補助金投入を縮小するため、無保険者への罰金の撤廃や低所得者向けの医療制度拡充の停止といった内容が盛り込まれました。ただし、既往症による保険加入拒否を禁止する、子供は26歳まで親の保険に加入できる、というオバマケアの利点の一部は残されました。
しかしこの代替法案を共和党議会指導部が3月6日に公表すると、共和党内部の強硬派と穏健派から反対論が噴出しました。強硬派は「公約であるオバマケアの完全廃止から程遠い内容だ」、穏健派は議会予算局によるオバマケア代替法案では無保険者が2400万人増えるという試算に基づいて「代替法案は行きすぎだ」とそれぞれ厳しく批判するようになったのです。両派に対してトランプ大統領と共和党議会指導部は説得を試みたものの失敗してしまい、代替法案の撤回に追い込まれたのでした。