■トランプ政権発足半年の公約実現度・日立金属株とセブン&アイ株等
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●アメリカが中国を為替不正操作国に認定できないのは基準の問題
どの国でも新政権の節目は発足から100日、半年、1年です。トランプ政権は発足から半年を7月20日に迎えました。この間、トランプ大統領は約70もの大統領令を出したのですが、半年となると実際に選挙公約はどれくらい実現しているか、あるいは実現の目処が立っているかに注目が集まります。
トランプ氏が大統領選中に掲げた数々の公約のなかに、刺激的な中身で特に有権者にアピールしたものがいくつもありました。それらはトランプ氏の主要公約でもあります。すなわち、「TPP離脱」「パリ協定離脱」「中国を為替の不正操作国に認定」「オバマケア撤廃」「大型減税」「一兆ドルのインフラ投資」「メキシコの資金によるメキシコ国境の壁建設」「NAFTA(北米自由貿易協定)破棄・再交渉」です。
このうち半年で実現したのは「TPP離脱」と「パリ協定離脱」だけでした。離脱だけなら連邦議会での立法措置は必要ありません。それでトランプ大統領も離脱を公式に表明するだけでよかったのです。
しかし同様に立法措置がいらない「中国を為替の不正操作国に認定」は今のところ実現していません。アメリカ財務省には、特定の国を為替相場操作国に指定した場合、その国に対し報復的な措置を取ることが義務付けられています。トランプ氏は大統領選中から「中国は為替相場を操作してアメリカに損害を与えている。中国からの輸入品には45%の関税を課すべきだ」と主張してきたので、政権が発足すれば直ちに財務省を動かしてこの公約を実現させると思われていました。
それが実現していないのはむしろ財務省の認定基準の問題です。これによると、①巨額の対米貿易黒字、②大幅な経常収支黒字、③外国為替市場での持続的かつ一方的な介入、という3つの基準すべてに該当する国を為替操作国に認定し、2つに該当する国を監視対象国に指定するのですが、中国は①にしか該当しません。基準の2つに該当する国は日本、ドイツ、韓国、スイスですから、もし中国をどうしても為替操作国に認定したいなら、その前にこの4ヵ国を認定する必要があります。中国を認定する前提として他の国をまとめて認定するのは政治的にはやはり無理なので、中国を認定できないのです。