トランプ・ショックとトレード・ディシプリン/田渕直也のトレードの科学 Vol.039



トランプ・ショック

皆さんはトランプ・ショックの時にどうされましたか。

今年は、ブレグジットといい、トランプ・ショックといい、本当に予想外のことが続きました。でも、予想外のことは起きるものです。それは、一つには、世の中には本質的に予測不可能な変化が生じるからであり、もう一つには、非連続的な変化を予想することが人にはとても難しいものだからです。

ちなみに、常々「予想外の出来事に備えよ」と主張している当の私自身はどうだったかというと、トランプ勝利もその後の市場の反応も全く予想できていませんでした。

11月9日、大統領選の投票が終わった時点までに、市場はほぼ完全に「クリントン勝利」を織り込んでいました。ですから、本当にクリントン勝利の結果が出ても、市場の反応は一時的、限定的なものにとどまったでしょう。その一方で、わずかな確率でもトランプ逆転勝利となれば市場に大変動が起きます。“非対称の収益機会”が存在しうる状況だったわけですね。

私は、そこで「ちょっとドルを売っておこうか」と考えたのですが、ちょっと忙しかったのにかまけて、結局何もせずにその時を迎えました。今回ばかりはクリントン勝利で間違いないと思い、さぼってしまったわけですね。わずかでもチャンスがあると思ったときに動かなければ何も始まりません。トレーディングの世界でも、勤勉さはとても重要な要素なんですね。それが、今回、私が得た最初の教訓です。

さて、開票が進み、トランプ優勢が伝えられると、早速マーケットは混乱に陥り、ドルは大きく売られました。「しまった」と思った私は、そこで慌ててドルを売りました(ただし少額)。ところが、そうこうするうちに意外なことにドルは反転を始めたわけです。

この点については、ある意味で仕方のないことだったと思っています。遅れて流れに飛び乗ろうとして、飛び乗った後に相場が反転するのは、なんともやるせないものですが、それはそれで仕方ありません。

しかし、ドルの反転が勢いを増してくるなかで、うまく早期に損切をすることができずに、結局3円以上もの損を出してしまったのはいけませんでした。ポジションが少額だったことが唯一の救いでした。

うまく損切が出来なかった最大の原因は、トランプが万一当選したときに何が起こりうるのか、きちんとシミュレーションをしていなかったことです。たとえ、ちゃんと準備していても、予想外の事態がおきれば円高・株安が進むと予想をしていたと思いますが、少なくともトランプの政策が景気刺激的で、ドル高・株高につながる要素を強く持っていることを事前に認識していれば、もっとうまく対処できたのではないかと思います。

つまり、予想外の出来事に対処できずに、損切が遅れてしまったわけですね。悪いトレードの見本のようなものです。

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