政策や制度の変動は非対称な収益機会を生む/田渕直也のトレードの科学 Vol.033



政策的・制度的変動による収益機会

いや~、トランプ大統領、びっくりですね~。

ブレグジット(英国のEU離脱)のときに、グローバルに今までの常識が通用しない地殻変動(反移民、反エリート、反知性~反ポリティカルコレクトネス~など)が起きていて、想定外のことが起こりうることを改めて認識したつもりでしたが、それでもやはり驚きの結果でした。メディアでは“接戦”が伝えられていたものの、投票日12:00時点の予測マーケットではクリントン候補の当選確率は90%に達し、ほぼすべての市場関係者が「クリントン勝利」を確信していたものと思います。

ちなみに、メディアではではたびたび「支持率が拮抗」などと報じられていましたが、世論調査よりも正確といわれる予測マーケットでは、選挙期間を通じてほぼ一貫してクリントン優勢で、安倍首相が訪米時にクリントン候補とだけ会談したのも、外務省がクリントン勝利予測に相当な自信を持っていたためとみられます。

結果が判明した後の市場の反応もちょっとビックリでしたね。

たしかに、トランプの方が政策的にはプロ・ビジネス(親産業界)で、非常に景気刺激的です。それだけを見ると株価が上昇するのはおかしくないのですが、先行き不透明感や海外市場での売り先行をはねのけて株をアグレッシブに買い進む米国投資家のポジティブ思考には、やはり戸惑いを禁じえません。

注目すべきは米国の長期金利の急上昇です。これが、これまた予想外のドル急騰の原因だったわけですが、今回の一連のマーケットの反応の中でももっとも注目すべきもので、「デフレ圧力+超低金利」というこれまでのグローバル経済のパラダイムの転換を示唆している可能性があります。本当にそうだとすると、そのインパクトは非常に大きなものとなるでしょう。

いずれにしても、トランプが掲げるアメリカの自国中心主義や反グローバリズムは、長期的に非常に深刻な影響をもたらすものだと思います。先週のマーケットは、そうした長期的影響は棚上げして、目先のポジティブな一面だけを見ようとしている感があります。

さて今回は、トランプ・ショックにもちょっとかかわりがありますが、政策的・制度的要因による収益機会についてです。

今回のように、あまりに予想外のことが起きると、それについていくことが難しくなるのですが、たとえばソロスのポンド売りのときのように、政策的、制度的な要因から非ランダムで非常に大きな収益機会が生まれることがあります。この点については、今まであまり触れてこなかったので、少し整理しておきたいと思います。

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