シンガポール出身の無敵のエリート ―留学で出会ったクラスメイトたち― 『ハーバード留学記Vol.11』 山口真由 

 留学で出会ったクラスメイトたちについて述べていくこの企画。香港から来た美少女・シャロンに続いて登場していただくのは、シンガポールから来た無敵のエリート・ウェンディである。彼女はシンガポールの英才教育の賜物である。オックスフォードの医学部を卒業してから、ハーバード・ロースクールに入学してきた彼女は、医学と法学について世界のトップクラスの教育を受けたわけである。

 エリートが多いハーバードであっても、これほどの学歴を持つ者は少ない。それはシンガポールの英才教育の賜物である。初期にエリートを選抜して豊富な投資をするシンガポールの英才教育は、とても効率的なのだ。半面、遅咲きの子たちは切り捨てられるという、非情な側面もある。

 でも、シンガポールの一人の少女はいったいどうやってこれほどもモチベーションを維持したのだろう。オックスフォードに留まらず、ハーバードに渡った彼女、ステップアップを続けるのはなにゆえか。そこにあったのは、我が娘に託した母の願いだった。

1. 早熟の子に有利、遅咲きの子は切り捨てかねないシンガポールのエリート教育

 よく話には聞いていたが、ウェンディから実際に聞いたシンガポールの教育というのは、早熟の子には素晴らしいチャンスを提供するものの、遅咲きの子は切り捨てかねない、そら恐ろしいものだった。

 小学校3年生の時に、シンガポールの子どもたちはみな「統一テスト」を受ける。そこで良い成績を取った生徒は将来が保証され、逆に悪い成績に終わった生徒の将来は閉ざされることになる。

 統一テストで抜群の成績をおさめたウェンディは、成績優秀な子供たちだけを集めた公立学校で学ぶことになる。「シンガポールでは公立校の教育がものすごく行き届いている。逆に、私立校に通うのは、公立校でよい成績を上げられなかった生徒だけなの。まゆ、将来、子供を教育するならシンガポールよ。質の高い教育が格安で受けられるんだから」と、ウェンディは常々私に言っていた。

 私の出身地・北海道を含む日本の地方では、だいたい公立高校がその地域トップの名門なのである。同じようなイメージだろうか。

 ちなみに、日本から移住する人が多い香港とシンガポールだが、両者はライバル関係にあるらしい。シンガポールからのクラスメイトによれば、シンガポールの新聞には香港の失政が一面記事になって載るらしい。香港からのクラスメイトに、「日本ではシンガポールは『明るい北朝鮮』と呼ばれている」と教えると、“bright North Korea”と膝を叩いて大爆笑して喜んでいた。

 シンガポール出身のウェンディに、「日本の子どもが海外で教育を受けるならシンガポールと香港どっちがいいと思う?」と聞くと…



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