日本の自分をアメリカ再現してはダメ! ―留学で出会ったクラスメイトたち― 『ハーバード留学記Vol.10』 山口真由

さて、前回は香港から来た美少女・シャロンのことをお話した。今回も引き続きシャロンの話をしたい。私がシャロンをとても大好きになったのは、あるきっかけがあった。アメリカに渡った私が、すべての自信を失い、自分自身すら見失っていたことは、何度もお話したとおりである。気の利いた言葉のひとつも言えない私は、クラスで一番退屈な人だろう、私なんかと誰も話したくなんかないだろう。私はとっても悲観的になっていた。

 シャロンは、私が私のままでいていいと最初に認めてくれた女の子である。それ以来、私は、「日本にいたときの自分」をそのまま再現しようと思うのをやめた。アメリカの地で、「新しい自分」を作ることに決めたのである。新しい自分がどれだけ愚かしくても、一生懸命に頑張る自分を、私はきっと好きになれるだろう。そして、そういう自分を好きになってあげられたことが、アメリカで多くの友達を作るには、一番大切なことだったと思う。

1. 日本にいた自信に満ち溢れた自分、アメリカに渡ったおどおどした自分

「休暇に故郷に帰ると、自分が大きくなって自信に満ちた大人の女性になった気がする。

 休暇が明けてハーバードに戻ると、自分が小さくなって、まるで大学生の中に混じった愚かな小学生の女の子のような気がする。」

 田舎の高校からハーバードに合格した女生徒が、自分自身を評価して語った言葉である。この言葉は、私自身の心情にもよくあてはまる。

 アメリカに渡って、日本にいた時の自分を振り返ると、とても自身にあふれていたように思った。なんでも自分で決められたし、他人を気遣う余裕もあった。アメリカでの自分は、最初のうち、いつもおどおどしていたように思う。

 レストランに行っても、メニューを聞き取ってもらえないのではないかと不安になる。レストランで友達同士でお話をしていても、「真由はどう思う?」と聞かれたら答えられないと不安になる。授業で「お互いに自己紹介を」なんて言われた日には、頭が真っ白になるのである。

 こんなにおどおどして、しゃれたことのひとつも言えない私は、クラスで一番退屈で、クラスで一番価値のない人間だ、私と話しても面白くなんて全くないに違いない、私はそう思っていた。

2. クルージングの帰り道、ロースクールのロビーで

 そんな私の思い込みを変えてくれたのはシャロンである。彼女は、そのときのありのままの私を認めてくれたし、私と話すのが楽しいと言ってくれた。それから、私は、日本にいたときの自分とアメリカに渡った自分を比べるのをやめた。それが大きな転機となって、私はアメリカに渡って失ったものを数えるよりも、アメリカに渡って得たものを大事にできるようになり、ポジティブな気持で、留学を楽しむことができるようになったのである。

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