AI時代の投資の世界と人間投資家の生きる道/田渕直也のトレードの科学 Vol.037

人間ファンドマネジャーはチープな代替品に?

ディープラーニングに代表される新世代の人工知能の特徴の一つでもあり、大きな躍進が期待できる理由の一つでもあるのが、人が識別できないパターンを識別できるということです。名人を破ったグーグルの「アルファ碁」も、時として人間が思いつかないような手を打つことがあり、しかもそれが意外に有効な手だったりするそうです。

相場の世界でも、人が識別できずに手つかずで残されている一万円札がまだまだたくさん落ちているかもしれません。近年の人工知能ファンドの続けざまの成功は、未開拓の地が開拓されていくような大きな可能性を感じさせます。

しかし一方で、「自分で考える」人工知能が何故そう考えるようになったのかは、その人工知能が賢くなればなるほどシステムの開発者にもわからなくなります。なぜなら、それは人に与えられたものではなく、AIが自ら学んだものだからです。中身が完全にブラックボックスで、でもなぜかやたらと成績がいいAIなんかが登場してくるわけです。

では、こうした潮流は相場の世界に何をもたらすのでしょうか。

まず間違いがないのは、いずれ、少なくとも特定の分野で人間のファンドマネジャーやアナリストを凌ぐような人工知能が出現するということでしょう。ルネッサンス、ツーシグマやリベリオンを見ると、もうこれは部分的には現実となっているのかもしれません。

でも、人間のファンドマネジャーやアナリストが完全にコンピューターに入れ替わることは考えられません。その最大の理由は、前にも触れましたが、人工知能といってもレベルは様々であり、本当に人間に入れ替わるほどの高性能な人工知能は開発に莫大なお金と高度な専門知識が必要になるということです。

ほとんどの運用会社は人工知能を大々的に取り入れることなどできず、できたとしてもレベルの落ちる規格化されたバージョンを補助的に使う程度ではないでしょうか。

でも、これはある意味で、人間のファンドマネジャーやアナリストが、人工知能の安い代替品となってしまうことを意味しています。資金力が豊富な巨大ヘッジファンドは人工知能の開発にお金を注ぎ、それが出来ない運用会社が人間のファンドマネジャーやアナリストを雇うのですから。

もちろん、当面の間は、単なる分析や投資判断だけではなくて、面白いストーリーを面白おかしく語ってくれる語り部としての人間ファンドマネジャーやアナリストの需要はなくならないでしょう。しかし、将来的(しかも比較的近い将来)には、彼らもよっぽど精進しなければ、お金をかけてAIを開発できない運用会社でしか生き残れないことになります。

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