
世界最高の投資家
相場変動の多くは予測不可能な動きであり、部分的には予測可能なものがあったとしても、全体としてみれば予測はできないと考えることは、とても理にかない、そして現実にも合うものだと思います。
一代で資産数兆円を築いたバフェットにしても、一時勝率8割を誇ったラリー・ウィリアムズにしても、1,237日無敗のバーチュにしても、上記のマーケットの見方と大きく矛盾しているとは思えません。彼らは、市場にわずかに存在する予想可能な部分にフォーカスを当てたり、ほんの少しだけ勝ち目の高いトレードを数限りなくこなしたり、あるいは仲介手数料的な収入を確保したりすることで大きな実績を上げているのです。それは、十分に説明と理解が可能な領域です。
ところが相場の世界には、本当は相場のもっと多くが予測可能であり、確実に、しかも大幅に利益を上げる秘密の方法があるのではないかと思わせるような投資家が一人(一ファンド)だけいます。ジェイムズ・シモンズと彼が創設したルネッサンス・テクノロジーズです。秘密のベールに包まれた彼らこそは、“聖杯”(相場に勝ち続ける秘密の魔法)を手にしたとも評される存在です。
高名な経済学者で、基本的には効率的市場仮説の立場に立ちながらも、ヘッジファンドなどへの投資を通じて投資家としてもすぐれた洞察力を兼ね備えていたポール・サミュエルソンは、ルネッサンスに招かれたときに次のようにスピーチしています。「もし誰かがマーケットに勝てるとしたら、その連中はどこかに隠れてしまい、誰にもその秘密を教えないだろう。どうやらその連中はここにいたようだ。」(『ザ・クオンツ』より)
また、ジェイムズ・ウェザーオール著の『ウォール街の物理学者』には、次のように記されています。
「世界一のファンドマネジャーは、ウォーレン・バフェットではない。ジョージ・ソロスでもなければ、ビル・グロースでもない。たぶん誰も聞いたことがないような人物だ。」
そこで名を挙げられているのが、シモンズです。
シモンズは現在第一線を退いていると伝えられますが、彼が指揮を執ったおよそ20年あまりの間、ルネッサンスの旗艦ファンド、メダリオンの手数料控除後の年平均リターンが38%だったともいわれています。ルネッサンスの手数料は非常に高いことで知られており、手数料控除前の年平均リターンは80%近くに達すると考えられています。
バフェットの年平均収益率は22%とか23%(ただし期間は50年以上にわたる)などといわれているので、ルネッサンスの運用成績がどれだけすごいかが分かると思います。まさに世界一の名に恥じない実績です。