[歴史発想源] <精強の証左・赤備軍団篇> 第一回:甲斐を駆ける猛虎「飯富虎昌」

2016年のNHK大河ドラマ『真田丸』に続き、2017年の大河ドラマは『おんな城主 直虎』! 歴史ファンは「2年連続だっ…!」と驚いたことでしょう。そう、この2作のエピソードに共通するシンボルと言えば、赤い甲冑!

「赤備え」が動けば、天下が動く……! 戦国最強の精鋭部隊「赤備え」(あかぞなえ)は、戦場に現れるや敵の戦慄させて戦意を奪い、味方の士気を大いに上げ、戦況を一変させるほどの強烈なパワーを持っていました。

そんな深紅の最強軍団「赤備え」は名将から名将へと受け継がれていき、その強さは天下へと轟いていきました。

「赤備え」の名将たちの生き様を読み解けば、現代の企業経営において社内に最強のチームを生み出すヒントが見えてくるのではないでしょうか。

経営者・マーケティング担当者向けメディア『ビジネス発想源 Special』で連載中の、歴史上のエピソードから現代ビジネスの経営やマーケティングに活かせるヒントを見つけ出す人気コンテンツ「歴史発想源」。

戦国最強の精鋭部隊「赤備え」を率いた名将たちを描く「精強の証左・赤備軍団篇」、いよいよスタートです!

※副題は便宜上「井伊直政の章」となっていますが、井伊直政だけではなく飯富虎昌、山県昌景、井伊直虎、真田信繁(真田幸村)、井伊直孝など、様々な名将たちが登場します!



▼歴史発想源「精強の証左・赤備軍団篇」〜井伊直政の章〜

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【第一回】甲斐を駆ける猛虎、飯富虎昌

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■甲山の猛虎、戦乱の甲斐国を切り拓く

時は戦国時代。

応仁の乱をきっかけに、日本全土が群雄割拠の地と化し、全国各地で争いが繰り広げられるようになりました。

それまでは、今の都道府県にあたる「国」を、守護(しゅご)と呼ばれる役職の人間が治めていましたが、その守護と親戚同士が分裂して争ったり、家臣が独立したり主君を殺したりするなど、もうその勢力図がぐっちゃぐちゃになっていったのです。

つまり全国区の会社にたとえるならば、本来は支部長やエリアマネージャーがその地域の中で一番権限がある役職なのに、その下についている支店長や営業所長やフランチャイジーなど、いろんな役職の人たちがみんなそれぞれ力をつけていって、支部長やエリアマネージャーの言うことなど全く聞かずに独自に権力を行使し始めたという感じです。

当時の各地の国の治め方というのは、絶対君主制ではなくて、小さな国人領主の集合体でした。

つまり、室町幕府から任じられた守護が当地の総責任者ではあるのですが、実際にはその領土の国人領主たちの合議制の場で、守護はその議長という立場に近い存在だったと言えます。

だから、会議メンバーである国人領主たちの中で「議長(守護)がなんぼのもんじゃい」と議長の発言を遮ったり無視したり、議長を議長席から引きずり下ろして自分が議長席に上がるなんていう実力者も、家臣団の中からどんどん出たのです。



甲斐国(=山梨県)も、そんな国の一つでした。

甲斐国は長らく、武田氏という一族が室町幕府から守護職として任じられていましたが、戦国時代になると武田氏の威厳は衰えてきて、守護代(守護の代理職)や国人領主たちが守護の武田氏の言うことを聞かず好き勝手に戦いまくっていたのです。

そんな弱体化していたはずの甲斐武田氏に、めちゃくちゃ強い人物が表れます。

武田信虎(たけだ のぶとら)という人物です。

永正4年(1507年)に家督を継いだ武田信虎は、凄まじい行動力の持ち主で、武田氏の衰退をいいことに国人領主たちが好き勝手に戦乱を起こしていた甲斐国を瞬く間に鎮圧してしまい、守護武田氏を見事に復権させたのです。

そして、甲斐国の統治をさらに万全なものにするため、それまで笛吹市にあった本拠地の守護居館を、甲府市の躑躅ヶ崎(つつじがさき)に移し、強固な城下町として整備します。

現在の山梨県の県庁所在地は甲府市ですが、甲府市が山梨県の中心地となったのは、この武田信虎による整備からその土台が始まっているのです。



そして、このめちゃくちゃ強い武田信虎には、めちゃくちゃ強い家臣たちが揃っていました。

主君の一文字を名前にもらうことを偏諱(へんき)と言いますが、その家臣たちには、武田信虎の名の一字「虎」をもらっている武将が多くいます。

甘利虎泰、原虎胤、小畠虎盛などたくさんいて、しかもそれらがみんな、強者ぞろい。

その中でも、とにかく猛将として名高い人物が、飯富虎昌(おぶ とらまさ)という武将でした。

とにかく、その強さが桁違い。

部隊の人数は少数でありながら、その何倍もの兵数を誇る敵軍を叩きのめし、次々に敵の将兵の首級を上げていく。…

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