大学入学共通テスト試行調査(11/10実施・国語)を斬る ~生徒の実物答案で実証!~

先日、2018/11/10・11の2日間、約8万人の高2,高3を対象とした大規模なテストが行われました。大学入試センター試験に替わって導入される大学入学共通テスト※の、試行調査です(※2021年1月実施予定)。去年の11月に実施された試行調査については、既に分析記事をアップしています。

去年11月のテストにくらべ、今年11月のテストは「だいぶ様変わりした」「一定の評価ができる」といった、前向きな評価をする識者が多いようですが、私からすると、五十歩百歩、どんぐりの背比べ、といったところでした。ただ、今までのセンター試験とくらべると、素材文が短めになっていたり、小説がなくなっていたり(詩とエッセイはあるが)と、好感の持てる作りになっているのは確かです。

が、それでもやっぱり問題は山積。われわれ民間が、可能な限り追究(追及?)していかねばなりません。

マーク式設問についても扱うべきなのですが、今回はやはり、センター試験改革の「目玉」でもある記述式設問(第1問)に絞り込んで、分析していきたいと思います。

まずは例によって、読者ご自身に解いていただく必要があります。公式ページからPDFを入手し、解いてみてください。大学入試といっても難易度はさしたるものではなく、正直なところ中学入試と大差ありません。

ただし、その採点基準は非常に異質です。

今回は、そのあたりを中心に指摘していきます。

なお、今回の記述設問は、当塾生徒の中3~高3(うち10名)を対象に解いてもらいました。その具体的な答案も紹介しながら進めていきます。

目次:

【1】いい加減すぎる記述正答例

◆記述の常識を崩壊させる「指定字数の軽視」──字数はなぜ必要なのか?

◆センターが用意した問1の「正答例」はどれも正答ではない!

【2】実物答案が如実に示す、記述採点の難しさ

◆またしても粗悪正答例──“This is a book”が答えに入るはずがない!

◆記述採点はこんなにも難しい──当塾生徒10名の問2答案で実証する

◆接続語「しかし」を禁じてしまう問3の記述条件

【1】いい加減すぎる記述正答例

◆記述の常識を崩壊させる「指定字数の軽視」──字数はなぜ必要なのか?

今回の記述設問における最大のポイントは、いわゆる「途中点」に該当するシステムが導入されたということです。1年前の試行調査では、シロでない答えは全部クロ、という採点だったため、正解率が0.7%という問いも生じてしまいました。そこで大学入試センターは、苦肉の策を練ってきたわけです。

ただし、正確には途中「点」ではありません。そもそも点数をつけず、段階評定にするというのです。具体的には、次のようになっています(第1問の問1の場合で例示)。

問1の評価基準



問1の段階表
全体の段階表

こうした段階的評価を小問ごとに行い、それを全体の段階表に当てはめて、記述の総合段階を評価するというわけです

まあよく考えたなという感じもしますが、最大の驚きは、「指定字数の軽視」です。

正答の条件①は「指定字数以内かどうか」です(どの小問も同じ)。たとえば問1の場合、字数がオーバーしていても段階bは取れます。また、段階cも次のように定義されています(先掲表の引用)。

次のいずれか(①は満たしていても満たしていなくてもよい)

・条件②を満たしている解答(③は満たしていない)

・条件③を満たしている解答(②は満たしていない)

つまり、こういうことです。

段階aを目指さない限り、字数は無視してしまうほうがラク。

一般に、記述答案を作る際に最も苦労する点の1つは、なんと言っても「指定字数に収めること」です。字数オーバーなんて、もってのほか。句点1つでも超えれば、それは無条件に不正解となる。だからくれぐれも気をつけなさい。

──世の教師という教師はみな、そうやって指導してきたはずです。学校であれ、塾であれ。

字数というのは、「絶対の正答条件」だったのです。

答案が指定字数に収まっている場合に限り、内容の途中点を与えていく。

これがあらゆる記述採点の常識でした。

ところが、今回の試行調査は、この常識を崩壊させました。

指定字数は正答条件の1つにすぎないというわけです。

指定字数とは多くの場合、抽象化の度合いを指定するものです。

80字、60字、40字……と字数が減るほど、内容を要約・抽象化して、骨組みだけを抽出した答案を作らねばなりません。逆に、字数が多ければ、ある程度の具体例等を入れていくことになります。

こうした抽象化・具体化の能力を試すためにこそ、指定字数は存在します。

その枠組みを外すということは、抽象化しなくてもよいということを意味します。

早い話が、字数を無視して力技で本文をコピペすれば、正答条件に該当する部分が「含まれる」答案は、作れるかもしれません。

こうした意味から、字数指定はやはり外すべきではなかったでしょう。

ただ、問題冊子の裏表紙に掲載された涙ぐましいばかりに詳しい「解答上の注意」をみると、やはり「1字」の判断は非常にシビアであることが分かります。ですから、「まっとうな内容の答案」を字数オーバーで切り捨てるよりは字数という条件を格下げしたほうがいいだろう、と考えたのも、一定の理解はできます。

問題冊子の裏表紙にある、解答上の注意
解答用紙(記述の部分)

このバカバカしいばかりの当たり前の注意事項も、「解答用紙の点線枠」というのも、いずれも今回の試行調査から登場したものです(逆に、前回は指定字数を明確にしておきながらこんな注意事項すら設定していなかったわけです)。

なお、点線枠の内側はそれなりに余裕があるため、シャーペンを使って小さい文字で書けば、かなりの字数を追加できてしまいます。

それにしても、と思います。

大学入試センターは、各メディアもこぞって取り上げた「0.7%ショック」に、よほど頭を打ちのめされたのでしょう。その反動で難易度を下げた印象が、どうしても否めません。

むろん、難しすぎるのは考えものです。しかし、能力を発揮しようがすまいが正解になってしまうような設問が、果たして良問と言えるのか。

はなはだ疑問が残ります。

「能力を発揮しようがすまいが正解になってしまうような設問」と、今書きました。

それはむろん、字数指定の緩さの話だけをしているのではありません。

これから述べる各設問の分析こそが、その本筋です。

◆センターが用意した問1の「正答例」はどれも正答ではない!

まず、全体像です。

問1……主に、言いかえる力(同等関係整理力)を試す設問

問2……主に、たどる力(因果関係整理力)を試す設問

問3……主に、言いかえる力とたどる力を試す設問

ただし、問1・3は、くらべる力(対比関係整理力)もかなり必要です。

さて、問1から見ていきましょう。

〈問1〉文章Ⅰの傍線部A「指差しが魔法のような力を発揮する」とは、どういうことか。三十字以内で書け(句読点を含む)。

なんのことはない。傍線部の言いかえ設問です。

あらゆる読解問題で最も多いパターンです。

私が、『国語読解 [完全攻略] 22の鉄則』の114~125ページの、筆頭に上げているパ

ターンです。

鉄則15 「比喩」は〈具体〉である。まず、抽象化せよ。

鉄則16 傍線部がパーツに分けられるなら、パーツごとに言いかえよ。

この2つの鉄則を使って解くのがセオリーです。

まず鉄則16に従い、次のようにパーツ分けします。

――以下は有料となります――

以下の内容紹介:

・問1の解法と、福嶋の解答

・問1の「正答の条件」の何が問題か?

・問1の「条件を満たす正答例」を福嶋が採点した結果(3つとも10点中6点)と、その理由

・問2の解法と、福嶋の解答

・問2の「条件を満たす正答例」を福嶋が採点した結果(2つが10点中10点、1つは完全な0点)と、その理由

・問2をふくしま国語塾の生徒に解かせた際の実際の記述答案10名分を掲載。それに対する福嶋の採点(10点満点のパターンと、センターの基準による段階評定のパターンの両方)と、その理由

・問3は短評のみ

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