◆ヨーロッパと日本の町並みからわかる「豊かさ」の違い
ヨーロッパに住むと彼らの生活が「豊か」であることに気が付きます。もちろん、余り褒めたことでは無く、彼らは1500年から約400年の間、アジアやアフリカを植民地として支配し、そこからの上がりで裕福になったのですから、いわば現在のヨーロッパの豊かな文化は植民地の圧政からもたらされたものとも言えます。
でも、それはともかく彼らの生活の中に私たちが今後の社会を作っていくのに参考になるものが多いことも事実です。パリに行くと日本では超有名なブランド店が多いのですが、そこで買い物をしている人の多くが日本人やアジア人で、それも群がるようにしてバッグや香水を買いあさっています。
著者は有るときにパリでズボンのベルトを買う必要があって、ベルト屋さんに買い物に行きました。さして高級な店では無く、日本でベルトを買うのとほぼ同じ値段のようなものが置いてありました。一つ選んでお金を払うと、ノートを出してきて住所を書いてくれというのです。「なぜ、住所を書くのですか」と聞くと、何かトラブルや具合が悪くなったら連絡するためだと言われました。
たかがベルト一本ですから、日本ではそんなことはあり得ませんが、それがヨーロッパなのです。余裕のある家計、ゆったりした時間、自分の好きなことや好きなものを見分ける力、美しく整った街角、整備された歴史的な建物、そして、レストランに行くと日本のように入り口にビールのケースが積んであるなどと言うことも無く、快適なデザインと清掃が行き届いています。
もちろん、貧乏でも小綺麗にしておくことができますし、お金が有るということがそのまま豊かな生活とも限りません。でも平均的に見ると町の美しさ、そこを歩く人の上品さなどは豊かな生活を100年ぐらいしないと定着できないものです。それは先を争って走る人もいないし、大声で話している人もいない成熟した社会なのです。
日本もひと頃から見るととても素晴らしい社会になりました。著者が若い頃には「ストーム」というのがまだあって、独身寮の部屋で寝ているとどやどやと酔っ払った同僚が入ってきて、布団にオシッコをする等ということもありました。一言で言えば野蛮な国だったのです。