お母さんの作ったものはなぜ美味しくないか? 武田邦彦集中講座『おお、錯覚!食と健康(9)』

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◆料理屋の食事が美味しく感じる理由に「五感で感じる順序」が関係

「美味しいものがなぜ、健康に悪いのですか?」と25年ほど前から栄養の専門家にお聞きしているのですが、満足な回答を得られたことがありません。時には、「塩や砂糖は昔、手に入りにくいので、食べられる時に食べなければならないので、美味しく感じる」という説明を受けることがありますが、それでも体内に塩、砂糖などの成分が蓄積してきて、もう食べる必要がないことを体が知っているはずなのに、美味しく感じる理由を説明してくれる方はおりません。

私たちの体には「味覚」という機能があって、口に入るものが体に良いか、悪いか、危険か、などをとても細かく判断できるようになっています。

たとえば、採れたてのアスパラガスはとても甘くて美味しいのですが、2日目、3日目になるに従って、新鮮みがなくなり美味しくなくなります。でも、アスバラガスの成分が変化している訳ではありません。

おかしいですね?たとえば、黄緑色野菜が健康に良いといいますが、「なぜ、良いの?」と聞きますと、「β―カロテンが豊富だから」と答えてきます。でも、βカロテンが数日で分解されるものではありません。化学的には比較的、丈夫な構造で融点も180℃程度です。つまり、アスパラバス(黄緑色野菜の一種とされている)の栄養分は変わらないのに、味は落ちていくのです。

このことが何を示すかというと、味覚は栄養学より敏感だということです。だから、当然ですが自分の体に良いものは鋭く見分けることができます。さらに、台所のゴミの臭いはとてもイヤなものですが、それは「腐敗しているから危険だぞ」ということを味ばかりでは無く、臭い(臭覚)でも感じることができるようになっているからです。

「美味しいものを食べることが体に良い」というのは当然で、それは長い人間の歴史の中で獲得してきたものです。だから、「心が素直で、頭が洗脳されていなければ」、自分の五感だけを信じれば栄養学はあまり参考にはなりません。

「心が素直で、頭が洗脳されていなければ」というのは、味覚が余りにも敏感で、ちょっとしたものに影響されるからです。たとえば、カゼを引いて鼻がつまっていると味が分からなくなりますが、これは五感の順序が「触覚―臭覚―視覚―聴覚―味覚」の順番になっていて、臭覚が閉じると味覚もダメになるからです。またヒコーキのお弁当がまずいのも、ジェットの音が原因です。

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