仮想通貨って一体何?(下)
~仮想通貨詐欺にご用心!~
こんばんは。俣野成敏(またのなるとし)です。
春の代表的な花といえば「チューリップ」でしょうか?今ではその辺の公園でも咲いている、我々にとってなじみ深い花ですよね。バラのような華やかさもないし、ゆりのような高貴な香りもしない花ですが、独特の親しみやすさがあります。
なんでいきなりチューリップの話題から始めたのかというと、実は今から400年近く前、このチューリップの球根を巡って、オランダで歴史上初といわれる経済バブルが発生したからです。
チューリップはトルコ原産の花とされ、名前の由来はトルコ語のターバンを意味する「チュルバン」からきているといわれています。このチューリップが欧州に伝わったのは、16世紀中頃のことだとされています。チューリップバブルが発生したオランダは、もともとはハプスブルク家の領地でしたが、そのハプスブルク家がオーストリアとスペインに分かれた後は、スペイン領に属していました。
その後、宗教的な理由などから、オランダは本国スペインに反旗を翻し、八十年戦争と呼ばれる長い戦争を戦い抜きます。1609年、オランダはスペインから事実上の独立を勝ち取ることに成功しました。この後、世界的にも独立を承認されたオランダは、スペインに代わって海洋国家としての黄金時代を築きました。
このような時代背景の下で起こったのが、「チューリップ球根バブル」です。外来品種であるチューリップは最初、貴族の贅沢品として観賞用に栽培されているだけでしたが、富裕層の間に広まるにつれて、やがて高価なチューリップを庭に植えていることが、一種のステータスと見なされるようになっていきました。
チューリップは、もともと短期間で増やすのが難しい品種であり、それが球根の品薄状態を招きました。さらに、チューリップは病気に弱く、しばしばブレーキングと呼ばれる突然変異を起こしますが、それによって花弁は淡く、多彩な色へと変化したことから、ますます希少性を高めることとなりました。
1630年頃には、チューリップの球根が高値で取引されている噂が一般民衆の間にも流れるようになり、国家の勃興と合間って、市場は急激に膨張していきました。いつの間にか球根の直接販売以外に、球根の引換券も売買されるという先物取引も始められるようになり、中には球根を手に入れるために、家屋敷まで売り払う人が続出したといわれています。こうして1637年2月、ピークを超えた取引は一転して買手がつかなくなり、チューリップバブルは終焉を迎えました。
この事件には、後のバブル経済にも見られる共通の特徴があります。それは、
(1)(球根に)希少性があり、人々に渇望感を感じさせたこと
(2)貴族や商人だけでなく、民衆も投機に参加したこと
(3)みんなが「相場はまだまだ上がる」と信じたことです。
今日から見れば、「なぜ球根に価値があるなんて信じたのだろう?」とおかしく思う人もいるかもしれません。けれど我々に、当時の人々を笑うことができるのでしょうか?
紙のお金を使い、それに「価値がある」と信じている我々に。
【Vol.33『仮想通貨(下)』目次】
〔1〕イントロ:ビットコインはまだ「始まってもいない」
〔2〕本文:仮想通貨って一体何?(下)〜仮想通貨詐欺にご用心!〜
1、仮想通貨が不安なのは、デジタルだからじゃない
◎お金は「リアルじゃないと不安」は本当?
◎仮想通貨はやがて「クレカに取って代わる」
2、仮想通貨とハッカーの対決
◎ハッカーがハッキングをする理由
◎ハッカーがあなたの口座を狙ってる?!
3、アルトコインに未来はあるのか?
◎ハッカー被害に遭っても「依然2位」のイーサリアム
◎第三者の存在を必要とするリップル
4、仮想通貨元年は仮想通貨詐欺元年でもある
◎流行りものに付きものの「詐欺」
◎仮想通貨詐欺の手口とは?
5、詐欺仮想通貨事例
◎事例1:ディールコイン
◎事例2:XNF(ノンフィアットコイン)
◎仮想通貨の詐欺を見破る3つの調査項目
6、仮想通貨詐欺に遭わないためには?
◎「仮想通貨+ネズミ講」の組み合わせはNG
◎上場前の仮想通貨は信用リスクが高い
7、仮想通貨は新たな「インフラとなる」
★本日のワンポイントアドバイス☆★
仮想通貨投資の基本:ワン・ツー・スリー
〔3〕次回予告(予定):モノってどうやったら売れるの?〜売れる人が実行している「営業のコツ」とは?〜
〔4〕今週のQ&Aコーナー:投資信託で「月利2%強」の商品がある?!
〔5〕今週の気になるトピックス:「お正月に働くのは可哀想」ってどうなの?
〔6〕編集後記:「天才」じゃなくたって、起業はできる!
◆〔1〕イントロ:
ビットコインはまだ「始まってもいない」
さて。先週、「仮想通貨・前編」を配信した当日、最高15万円まで高値をつけていたビットコインですが、一転、今度は値下がりし、逆に一部の投機家の間では、人民元高によるパニック売りまで出たようです。
もともと、昨年(2016年)の前半は4万円台で推移していたビットコインですが、夏あたりから値段が上がり始め、12月に入って10万円を突破、ピークを超えた後に、現在は8万円台で推移しています。
これによって、今までビットコインに無関心だった人々の口からも、最近になって「ビットコインって儲かるらしいよ」という言葉がしばしば聞かれるようになってきました。400年前のチューリップ球根バブルの時と同じく、一般の方々にまでビットコインが浸透し始めているワケです。
最近、当マネースクールによくくる問い合わせというのが、「今から仮想通貨を買って間に合いますか?」というものです。それに対する僕らの答えは、「間に合うも何も、まだ始まってもいない」です。「間に合うかどうか?」という考え方は、「投機的」発想だと思います。
このタイミングでビットコインを購入した人は、1BTC(ビットコインの単位)が12万円でも安いと判断したことには違いありませんら。違いは「資産の一部として見ているのか」、それとも「短期的なトレード商品として見ているのか」ということです。
両者の違いとは、ビットコインの「未来を信じたのか?」それとも「価格差を狙ったのか?」ということです。同じ対象にお金を投じているにもかかわらず、前者は「戦略的」にお金を投じ、後者は「丁半博打」にお金を投じているのです。
一体、「仮想通貨バブルが起きているのか?」と問われれば、起きているのかもしれません。けれども、そもそも「いくらで取引されるのが適正なのか?」というのは、誰にもわからないことです。「バブルがいつ始まり、いつ終わるのか?」は、過ぎてみて初めてわかることです。ですから、本当に仮想通貨に投資をしたいと思うのなら、自ら情報を集め、自分なりに精査し、判断するしかないのです。
万一、価格差を狙うとどういうことになるのかというと、こうなります。
芸能人のノブコブ吉村さんが、2015年年2月にビットコインを100万円分買い、その翌月に10%下落して「もう上がる気配が1つもない」と嘆いている記事です。
そこから一年も経たない今。購入当時、1BTC=5万円だったそうですが、まだ持っていたならば、ノブコブ吉村さんのビットコインはピーク時に300万円近くまで膨れ上がっていたことになります。
素人が投機的に参入すると、よくも悪くもこのような動揺をすることになるのです。