こんばんは。俣野成敏(またのなるとし)です。
平成29年(2017年)分の確定申告が始まりました。昨年より、日本の仮想通貨業界では改正資金決済法が施行されています。これによって、国は仮想通貨に決済機能があることを部分的に認め、その取引が課税対象となることを法律によって定義付けました。
確定申告がスタート
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26990460W8A210C1CC0000/
改正資金決済法の施行後、初めての確定申告を迎え、どれくらいの自己申告があるのか、スムーズに納税まで完結できるのかが注目されるところです。中にはデイトレーダーなどのように、頻繁に取引を行う人にとっては取引記録の詳細を把握するだけでも大変な作業となることが予想されます。
記事によれば、これを好機と捉えて、仮想通貨の税金計算代行業を請け負うところが出現している、ということです。まさに「需要のあるところにはビジネスチャンスがある」好例だと言えるのではないでしょうか。
【Vol.88『仮想通貨書籍出版記念(3)』目次】
〔1〕イントロ:自分たちが通貨発行権を持つことの意味
〔2〕本文:『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」』出版記念号(3)〜仮想通貨を待つ未来とは〜
1、仮想通貨を持つことによって浮上する問題
◎避けては通れない保管・管理の問題
◎「激しい価格の上下」にはどう対応すればいいか?
2、仮想通貨にまつわるQ&A
◎Q1、仮想通貨は今後、上がるのか下がるのか?
◎Q2、今後、仮想通貨が統合することはあり得るのか?
◎Q3、仮想通貨の枚数は足りるのか?
3、仮想通貨が身近にある未来
〔3〕次回予告(予定):「自分メディア」をつくれば独立も夢じゃない!(1)〜自分の話を聞いてくれる人を増やす方法〜
〔4〕ニュースのビジネス的着眼点:再び、年金の支給開始年齢が後ろ倒しになる前兆か?
〔5〕編集後記:ミットネス渋谷店をオープンします!
〔6〕今後の特集スケジュール:2018年3月予定
◆〔1〕イントロ:
自分たちが通貨発行権を持つことの意味
仮想通貨取引所・コインチェックから580億円相当のNEM(ネム)コインが盗まれるという事件から1ヶ月経たずして、今度はイタリアの取引所・BitGrailでNanoと呼ばれる仮想通貨がハッキング被害に遭い、日本円にして約211億円が盗まれる、という事件が発生しました。
取引所側は、Nano開発チームに対してコインの記録の修正を依頼したものの、開発側はその申し出を断ったということです。取引所のCEOは、早々にSNSを通じて「全額返金は不可能」と公言したそうですが、すでにNano開発チームとの間には、簡単には埋まりそうにない不信感が芽生えてしまったようです。
コインチェックの場合は現状、「自己資産で全額返金する」と発表していますが、これらの事件を通じて仮想通貨の課題が浮かび上がってきます。つまり「仮想通貨は人為的に記録を改ざんすることができる」ということです。コインチェックも真っ先にNEM財団とコンタクトを取り、盗難に遭ったコインを分岐して使えなくするよう要請し、断られています。
今回の特集の中で、「仮想通貨の価値とは論理的、客観的に取引を証明できる点にある」ことを再三にわたってお伝えしてきました。にも関わらず、「仮想通貨は何かあれば取引記録を改正できる」というイメージが定着してしまえば、その価値を担保するのは難しくなるでしょう。仮想通貨を取り扱う業者には、常にこうした誘惑がついて回っているのです。
コインを盗まれたユーザーからしてみても、「お金を失いたくない」という思いが強くあるため、仮想通貨が一般化するにつれて、そうした世論の思惑が強く働くようになるものと予想されます。ユーザーは総体的に「易きに流れる」傾向がありますが、仮想通貨と付き合うに際しては「他の金融商品以上に自立した投資家であることが求められる」と言えるでしょう。
盗まれたNEMはその後、闇サイトで換金され、盗んだ者たちはすでに、少なくとも数億円を手にしたことがわかっています。NEM財団は、自分たちのコインを守るのと引き換えに、痛みを負ったわけです。提供する側にとしては、「サービス提供者として、どこまでコインの価値の保全に力を尽くせるのか?」「どこまで公平性を保つことができるのか?」ということが、業界の未来を大きく左右する気がしてなりません。