わが子を引きこもりにしないために/なぜアメリカが世界の覇権を握り続けるのか?~午堂登紀雄の「フリーキャピタリスト入門」

わが子を引きこもりにしないために

先週もまぐまぐさんからの依頼で特別原稿を書きましたのでご紹介いたします。

「8050問題」をご存知でしょうか。8050とは80代の親が引きこもり状態にある50代の子供を養っていることを示しているのですが、特にひきこもりの長期化で親子共々が高齢化し、社会から孤立・生活に困窮している世帯が増えているのです。

ではこれの何が問題かというと、生活保護世帯の増加につながるだけではなく、絶望して殺人事件にまで発展するケースが出ることです。

そのため政府もようやく2018年秋から40~64歳の引きこもりの人の実態調査を実施するということです。

何十年も引きこもったまま、親が高齢になり自分も年を取って、家ごと社会から断絶されると、もはや社会復帰の可能性はゼロ。その人そのものが社会から存在しないことになってしまい、親の死後は生きていけないリスクも指摘されています。

そこでわが子を引きこもりにしないための教育法や、抜け出させる策について考察したいと思います。

・引きこもりの傾向

本来、心が成熟した人間は、ひとりでも誰かと一緒でも満足できる時間を過ごすことができます。仮に物理的な状態としては孤独であっても、精神面では孤独ではないですし、自ら人間関係を遮断するわけでもありません。

しかし引きこもりは、自分の方から人との関りを避けて、物理的にも精神的にも孤立している状態です。

(なおここで言う引きこもりは、ウツや精神障害、疾病等で引きこもっている人を指すものではありません。それは医学的治療を受けるレベルの人ですので、ここでは対象外としています。)

引きこもりになる人の多くは、プライドと自己愛が強すぎるのです。だからちょっとでも人間関係がうまくいかないと、すべてがいやになります。

強烈な自己愛のため、自分の意見が受け入れられないとか、仕事ぶりを注意されただけで自分の全人格を否定されたように感じ、それがガマンできません。それでいて、むきたてのゆで卵のようにナイーブで傷つきやすい性格を持っています。

さらに、承認欲求も非常に強い傾向があり、他人から認めてもらわなければ自分の存在価値を確認できません。

そのため「誰も自分のことをわかってくれない」「認めてもらえない」「無視された」などと過剰に反応し、過剰に傷つきます。

たとえば一人ランチが続いただけで、会社で孤立している、皆から浮いている、無視されていると感じてしまう。

しかし実際には、周りは本人の気持ちを軽んじようなどという発想をそもそも持っていないことがほとんどなのですが、なぜか彼らは自分に敵意があるかのように受け止めます。

 

なぜそういう性格が形成されるかというと、多くの場合、幼少期に親から十分な愛情を受けていないことに起因します。愛情不足で育ったために大人になっても強い愛情飢餓感を抱き、それが自己愛へと形を変えて自分にすがるようになります。

だから何より自分が大事なのです。誰かに愛してもらいたい。周りに評価してもらいたいという欲求が強い。

愛情不足とは単に放置されるといったことにとどまりません。高すぎる親の期待、親の価値観の押し付け、厳しすぎるしつけや服従の強要、過保護、子への迎合など、様々な精神的虐待を含んでいます。

そのため、適切な自我や自己肯定感が育たず、つねに他人や社会からの視を気にし、自分の思い通りにならないと、自分の存在が否定されたかのように感じてひどく傷つくのです。

それを恐れて身動きが取れなくなり、人との接触を避けるようになります。人と関わることがなければ、自分が傷つくこともないからです。

・親は子に愛情たっぷり注ぐ

こうした事態を防ぐために、親ができることは何でしょうか。それは、子が適切な自己肯定感、自己有能感、自尊心、主体性を持てるような子育てをすることです。具体的には次のようなことが挙げられます。

親から「なんでこんなこともできないんだ!」「そんな子は知りません!」などと言われて育つと、子は自分の存在に不安定感を感じてしまいます。

しかし親が子に無償の愛情を注ぐことで、子は「自分はここに存在していいんだ」「世の中は自分を受け入れてくれている」「自分は大丈夫」という感情を抱くことができます。

それが「社会は自分の敵ではない」「人は自分に攻撃してはこない」という安心感が持てます。

親は子にとっての安全基地ですから、子が甘えたいときは、親はどっしりと構え甘えさせることです。

・子どもの意志を尊重する

親があれこれ先回りしたり、親がすべて決めたり、親の価値観を押し付けたりすると、子は自分の頭で考える機会を奪われ、自ら主体的に何かに取り組むという姿勢を失ってしまいます。

そこで、子の判断を促し、それを尊重することです。たとえば塾や進学などで親の価値観を押し付けない。勉強しろとか宿題しろなどと強制しない。大人でも強制されるのは嫌ですが、子どもはもっと鋭敏に感じてしまうものです。

そして子がやりたいということは、なるべくさせてあげる。子の好奇心の目をつぶさないようよく観察し、子が夢中になれることを見つけるサポートをすること。そして子が没頭できる環境を整えてあげることです。

自分で考えて自分で判断し、何かに没頭した経験は、集中力を養い、主体性をはぐくみ、自分はできるという自信につながります。

・親が精神的に成熟しておく

親自身が情緒不安定だとか、夫婦喧嘩が絶えないという家庭では、子は自分の居場所がないと感じ、やはり精神面でも不安定になります。

親は子の前では仲よくし、何があってもアタフタすることなく「大丈夫」という態度を崩さないことです。それが子にとっての全幅の信頼感につながります。

親が他人の悪口や陰口を言う精神性では、子は無意識に耳にフタをするようになり、人の話を聞かない子になってしまいかねません。

そして子に対してウソはつかない。約束は守る、守れない約束はしない、もし約束を破ったら子に対しても誠実に謝ることです。

・子の話をしっかり聞く

親子の会話は信頼関係、つまり人間関係の基礎になります。なのにいつも親は子の話を遮って「そんなことはいいから」とか「言い訳するな」とか「忙しいからあとで」などと対応していると、子は親に言っても無駄となり、親に対して不信感を抱きます。

それがつまらない話でも言い訳であっても、お小遣いの値上げ要求でもスマホを買ってくれというおねだりでも、最後までじっくり聞くことです。

そして前述のとおり、否定や批判ではなく、子の意志をなるべく尊重してあげること。

「親は自分のことを受け入れてくれる」「親は自分のことに関心を持ってくれている」という実感は、自尊心や自己肯定感につながります。

・ネガティブな言葉を使わない

親の思考は言葉に現れ、それが子に伝わります。

親が豊富な語彙で論理的に語り掛ければ、子の思考回路もそうなります。罵声や乱暴な言葉、否定的な言葉を投げかければ、子もそうなります。

子どもは自分に対する親の評価をそのまま受け入れ、そのとおりに行動するようになります。

だから「おまえには無理」と言われれば、「そうか、自分には無理なんだ」と信じますし、「バカ」と言われればバカのように振る舞います。「〇〇ちゃんを見習いなさい」などと他人と比較されると卑屈になる。

だからこそ、家庭内ではポジティブで発展的な言葉を使うことです。

・挑戦を称え、失敗を認め、努力をほめる

失敗や間違いを叱ると、できることしかやろうとしなくなります。そこで親は子が果敢に挑戦した結果の失敗は叱らずむしろ称えることです。

テストの点数が悪くても叱らず、「次はどうすればいいと思う?」と対策を一緒に考える。

100点をとっても「100点とってえらいね」と結果を褒めるのではなく、「頑張ったね」と100点を取るためにやってきた努力を褒める。努力を褒めれば、点数に関係なく「努力すること」を重視するようになるからです。

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