自分の絶対領域の作り方~午堂登紀雄の「フリーキャピタリスト入門」

自分の絶対領域をつくる

社会人の勉強とは、何をすればいいか。

たとえば「必要とされる知識」「社会から求められる能力」を勉強するのは当然と思うかもしれません。

確かにその側面はあるし、まったく無視してよいということにはならない。

しかし社会の要請に従って勉強分野を決めることは、環境変化に翻弄される生き方になりかねないというリスクも知っておく必要がありそうです。

たとえば昔の家の床は畳が一般的だったため畳職人の需要はあったが、今はフローリング全盛なので、畳に対するスキルの需要はほとんどない、というのはちょっと極端な例かもしれませんが、

たとえばかつてはワードやエクセルといったパソコンソフトが使えたら高く評価されたのが、今は一般的というか、できて当たり前のスキルになっているように、自分が学んだスキルが陳腐化することはあります。

それがもっと加速しそうなのがAI(人工知能)技術の進展です。ディープラーニングによるAIの進化によって、30年後には今ある職業のおよそ70%が消滅するとも言われています。

実際、チェス・囲碁・将棋では人間はもはやコンピュータに勝てないし、小説や新聞記事もAIが書く、資産運用もAIがトレードするといったふうに、すでにAIの応用範囲は広がりつつあります。

さらにはロボット開発も各方面で進んでおり、介護や受付業務などへの導入に期待されているという。わかりやすいのが自動車で、あと数年で完全自動運転に対応する見込みです。

そうなれば、多くの仕事の需要がなくなる、あるいは減っていくだろうとわかります。

AIは私たちの生活をより良くしてくれる一方で、ライフスタイルや産業構造、社会構造をも大きく変革し、人々の仕事の未来を不透明にさせていきます。

そのため、思いもよらなかった職種がAIに置き換わり、「10年後も安泰」と思われていたスキルのニーズが消滅する可能性もあるわけです。

そしてそこに待っているのは、限られた雇用の枠を奪い合う熾烈な競争という道か、賃金がどんどん安くなっていく貧困への道か、失業かのいずれかかもしれません。

そういった未来を踏まえ、ではどうやって自分のこれからの学習分野を決めればいいのか。

単純に考えると、人間に残される仕事は「新しいモノ・サービスを生み出す創造力」か、あるいは「より複雑で難易度の高い課題を解決する問題解決能力」という2種類に収れんしていく。必然的に私たちの学習分野も、これら能力の獲得あるいは強化につながること、ということになるでしょう。

それにはまず、「自分はこれが好きだ」と、突き詰めたい分野を抽出し、それをこの2種類のいずれかあるいは両方につながるようなスキルを特定することです。

そもそも、好きとかやりがいや使命感があるとか、強い動機がなければ突き詰めることが難しいからです。

たとえば自分は営業という仕事が好きだとします。

営業とは、顧客が抱えている課題やニーズを、自社商品を使ってもらうことによって解決あるいは満たしてもらおうとすることだと言えます。

そこで、潜在顧客にアプローチするマーケティングスキル、顧客のニーズを的確に引き出せるインタビュースキル、それを論理的に抽出・分析するスキル、そしてその解決には自社商品が効果的であると説得力のある説明ができるプレゼンスキルなどを鍛えようとする。

そして、そんなスキルを突き詰めるとは、イコール高い問題解決能力の獲得にほかなりません。

この能力が高ければ商品は何でもよくなります。保険でも不動産でも何でも売ることができる。何でも売れるなら、多くの業種業界でも通用する。もちろん、営業という仕事はAIでもロボットでも代替できないはず。

そんなふうに突き詰めていくと、自分の絶対領域ができ、高い参入障壁となります。

そしてそれら「能力」を複数の得意分野でかけ合わせれば、その組み合わせが強みを生みます。

たとえば私の場合は、自分の経験を文字として表現する能力に、投資や起業という分野の掛け算、ということになるでしょうか。

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