「副業時代のスタートアップ戦略」とは?~事業をする上で欠かせない事務作業との付き合い方~俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編 Vol.36

「副業時代のスタートアップ戦略」とは?

~事業をする上で欠かせない事務作業との付き合い方~



こんばんは。俣野成敏(またのなるとし)です。

 政府が「働き方改革」の一環として、サラリーマンの副業を「原則禁止」から「原則解禁」へと方向転換することが決まり、この一年が大きな時代の幕開けとなることが予想されます。

 副業が実際に解禁されれば、いずれは人々の間で「えっ、あなたまだ副業していないの?」という言葉交わされるような世の中になっていくものと思われます。しかし、いきなり「副業してもいいよ」と言われて困るのが、「何を売るか?」「どう売るか?」ということ。そもそも、サラリーマンをやっている理由というのが、「自分の売り物も、売るためのルートも持っていない」ことによるからです。

 たとえ副業にすぎなくても、「自分で商売をする」ということは、「自分の事業を持つ」ということです。そのためには、頭をサラリーマン脳から事業家脳に切り替えることがポイントになります。

 そこで、頭を切り替える参考となる記事をご紹介しましょう。ご存じ、キングコング西野さんが仕掛けた絵本プロジェクトです。

キングコング西野さんが絵本を無料公開

 西野さんは、最初は芸能人から出発していますが、以後はその枠にハマることなく、次々とご自身のアイデアを活かしてビジネスの幅を広げていらっしゃいます。その手法を我々がマネできるかどうかはさておき、学べる点は多々あります。

 西野さんが、絵本を全ページ無料公開したことについて、巷では「他のクリエイターの報酬が下がって生活できなくなる」という非難の声もありますが、無料公開したことによって、絵本が売れなくなるどころか、かえってアマゾン売り上げ1位に輝いたのは、ご覧の通りです。

 西野さんの言葉の中でもっともだと思ったのは、「人は確認作業のためにお金を支払っている」ということ。旅行に行くとか、ライブに行くとか、リアルの本を買うのもそうでしょう。人は「やっぱりいいね」と思うものにしかお金を払わないということです。ここで西野さんが言いたかったのは、「知りもしないものを、買ってはもらえないでしょう?」ということだと思います。

 わかりやすく解説すると、西野さんが仕掛けた絵本の無料公開は、アマゾンのキンドルアンリミテッドに近い発想です。キンドルアンリミテッドとは、「月額980円で、解放されている本を読み放題」というサービスです。出版社や著者には、ダウンロードや読んだページ数などの条件下でアマゾンから収入が入るシステムになっています。

 アンリミテッド内で多くの本が定額で読み放題になっているのは、気軽に手に取ってもらい、「面白い」と次につながることを期待しているからです。読者は「アンリミテッドでなければ絶対に手に取らなかった本」というのが必ずあります。読み放題サービスには、「知ってもらう」という大きな意味があるのです。

 だから、絵本の無料公開は「トータルで見ないといけない」というのが、ここでのキモになります。今、音楽業界がまさにそうですよね?いろいろなメディアがフリー化してきている中で、稼いでいるミュージシャンはみんなライブで稼いでいます。ましてや、無料化は出版社がOKを出しているワケですから、誰も損をしないスキームです。

「数字や言動のリアクションを含めて、本音である」。この記事には、そんなメッセージが込められているような気がします。結局、クリエイターといえども、人に必要とされてこそクリエイターとしての仕事が成立するのであって、そのためには「いかに届けるか?」ということが鍵となるのです。



【Vol.36『副業スタートアップ戦略』目次】

1、「給与所得以外で収入を得る」とはどういう意味なのか?

◎法人、個人、個人事業主は何が違うのか?

◎開業届は出した方がいいのか?



2、事務の仕事とは、「会社が何をしたのかを記録する」こと

◎本来、事務の手間は少なければ少ないほどいい

◎「これは経費になるのか?」という疑問からサヨナラしよう



3、事業をするにあたって付随する事務作業

◎契約書とは「仕事の範囲を明確にする」もの

◎「お金を受け取る」にも費用がかかる



4、個人「事業主」になるための心得

◎帳簿を付ければ「フローが見える」

◎「相手は本当に自分の顧客なのか?」を見極める



5、「自分の事業を持つ」ことの意味

◎「事業を持つ」とは「自分」で勝負すること

◎代行にも「マネジメントが必要」



6、「副業」は通過点にすぎない

◎本業と両立させるための2つのポイント

◎副業のウチに「失敗しておく」



7、副業こそ「自由への第一歩」



★本日のワンポイントアドバイス☆★

天職を見つけるための黄金の方程式

〔3〕次回予告(予定):「FPってどんな仕事?」〜人気の資格に隠された素顔とは〜

〔4〕今週のQ&Aコーナー:現物資産の賢い購入方法って?

〔5〕今週の気になるトピックス:「生命に手を加える」ことは、どこまで許されるのか?

〔6〕編集後記:思いがけない「誕生日プレゼント」





◆〔1〕イントロ:

「事業の本質を見失わない」ために

 さて。一口に「副業が当たり前の時代が到来しました」と言われても、多くのサラリーマンにとって、副業は「寝耳に水」のできごとと言えるのではないでしょうか。今まで「ダメ」だったものが、いきなり180度方向転換したワケですから、戸惑うのもムリはありません。

 しかし、以後は確実に「ウチは副業が禁止だから仕方がない」という言い訳が通用しない世の中が到来します。それは、いろいろな意味で実力社会になっていくということです。

 サラリーマンが副業する場合、その方法は主に2種類に分けられます。ひとつは別の会社にも雇用されるパターン。いわゆる掛け持ちです。そして、もうひとつは自営業を起こすパターン。当メルマガでは、複数の賃金労働の掛け持ちはお勧めしていません。「働き方革命」については政府方針でもあり、今年のキーワードでもあるので、さらに違う角度から改めて記事にするつもりですが、端的に言うと、2社目以降の労働賃金の時給は下がる傾向にあるからです。

 サラリーマンが「自営業を起こすパターン」で副業を始めるにあたっては、「何を」「どう売っていくのか」が問題になります。たとえ売り物と販売ルートが決まったとしても、今度は事業を行うにあたっての、「さまざまな派生業務が必要になる」という事実に突き当たります。

 サラリーマンとは、もともと会社の中で仕事を分担していますから、たいていは自分の専門外のことに関してはわからないのが実情です。そうなると、「経理なんてやったことないし」「税金わからないし」「帳票類はどうしたらいいんだろう?」「事業届って出さないといけないの?」「仕入れも交渉も全部自分がやらないと」・・・という状態に陥ります。

 こうして、多くの人が事業を始める前の段階でつまずいてしまうのです。

 私が主催しているマネースクールコミュニティでは、事業に関する講習会なども行っていますが、そこでよく挙がる質問というのが、「これは青色申告で認められますか?」とか「損益通算できますか?」といった内容です。しかし本来、事業でフォーカスすべきなのは、どう「顧客を獲得するか?」そして「その顧客にどうやって貢献するか?」ということです。

 ところが実際は、目の前の些細なことが気にかかり、経営者が本当にやるべきことに向き合えなくなってしまう事例が後を絶ちません。事務作業に関する細かい疑問で思考がいっぱいになってしまい、本領を発揮できないでいるのは誠に惜しいことだと考えます。

 ですから、事務の流れと注意点について、ポイントをあらかじめ理解しておけば、これから副業をする上において、いちいち立ち止まることも少なくなるのではないかというのが、本日お話する「スタートアップ戦略」特集を企画した意図になります。

「大事を小事の犠牲にしてはならない」(スティーブン・R・コヴィー『7つの習慣』)

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