お金持ちは長財布を持つのか?~午堂登紀雄の「フリーキャピタリスト入門」

お金持ちは長財布を持つ?

お金持ちは長財布を使っているという説がありますが、これは本当なのでしょうか。

・・・という質問を受けまして、以前も書いたことかもしれませんが、再度考察したいと思います。

結論から言うと、本当でもあり、本当ではないということになるのですが、お金持ちはそもそも財布の形状などは気にしないのです。

だから、「そうか、自分もお金持ちになりたいから長財布に買い替えよう」と捉えたとしたら、それは逆にお金持ちから遠ざかる人です。

そもそも長財布に変えた途端にお金が増えたとしたら、世の中はお金持ちだらけになるはずです。しかし現実はそうではありません。

そこで「お金持ち=長財布理論」のポイントを考察してみます。

■お金の出入りの管理能力が財布に現れる

長財布理論の本質とは、「お金の出入りをしっかり管理しているかどうかが、財布の整理という細かいところに出る」ことです。

お金持ちや高額所得者が長財布を持っているのは事実で、確かに長財布だと、お札を折らずに収納できるしカードやポイントカード類も整理されます。

そうしておけば、クレジットカードやポイントカードも、必要な時にサッと取り出して使えます。その管理に適しているのがたまたま、長財布タイプであるというだけです。

お金を管理する能力が、「持ち歩く現金の整理」という細かいところに出た結果、整理しやすい長財布を選ぶため、統計上はお金持ち=長財布が多くなるのでしょう。

実際、長財布に換えたからといって、入ってくるお金が増えるでしょうか。ムダな出費が減るでしょうか。財布の整理整頓がお金の残高に影響しないことは、おわかりいただけるでしょう。

それならば、今持っている財布でも、お金やレシートの整理・管理を始めることはできるはずです。

だから「お札の向きを揃えればお金が喜ぶ」とか「財布の中身を乱雑にするとお金が悲しむ」などというのは単なるオカルトです。

■財布を持たない人も増えている

現実には、二つ折りの財布を持っているお金持ちも大勢います。理由は「コンパクトだから」。ジャケットなどを着る季節なら上着の内ポケットに入れられますが、夏場は難しいでしょう。

ズボンのポケットに入れれば落としたりスリに遭ったりしやすいし、ブリーフケースを持つのも邪魔。しかし二つ折りならたいていのシチュエーションでかさばらずに持ち運べます。

そして昨今は、そもそも財布すら持たないお金持ちもいます。実は私も財布は持っておらず、持ち歩くのはカードケースのみです。

というのも、最近はほとんどのものがクレジットカードや電子マネーカードで支払えるようになっているため、現金を持ち歩く必要に迫られる場面がないからです。

消耗品や耐久消費財などの買い物はほぼネット通販で済ませますし、飲食店などでもカード決済です。細かいところでは、今や保育園の備品代も電子マネーカードで支払えますし、従来は現金しか受け付けていなかった100円ショップでも、カード決済ができるチェーンも出てきました。

私が日常生活の中で唯一現金を持ち歩くのは、公的機関で各種証明書を取得するときと、郵便局で切手を買うとき、近所の1,000円カットで散髪をするときぐらいです。(そう考えると行政だけが決済手段の対応が原始的なままですね)

■長財布理論を信じる人はお金を失いやすい

専門家もメディアも、必ずしも正しいことを言うとは限りませんし、データだって捏造される可能性があるのは、皆さんもご承知のとおりです。

長財布を買うことで本人が楽しいとか何かハッピーになるのであればよいのですが、ただ流されてお金を支払うのは、テレビで「○○を食べれば痩せる」という番組を見てスーパーに走る人と同じです。

だから専門家の言うことだから正しい、本やテレビで言っていることだから正しい、と鵜呑みにしない心の強さが必要です。

他人の言うことを鵜呑みにする人は結局よく考えていないわけであり、そうした姿勢の有無は、日常の買い物だけでなく仕事や投資にも影響するであろうことは想像に難くないでしょう。

世の中にはいろいろな情報があふれていますが、私たちは常に「その本質は何か」や「それを裏づける根拠や合理的な理由は何か」を考える必要があります。

■自分なりの根拠を持つ

世間に流布する通説に対してなんとなく納得するのではなく、その説の根拠を突き詰めることです。わからなければネットで検索してみれば、異論反論含めて、様々な意見や事例が出てくるでしょう。

そしてそれらを複合的に考察し、自分なりに合理性を認めたときに初めて、その主張や理論を受け入れる。

お金持ちは、そうやって真に腹に落ち、納得したことだけを取り入れます。だから行動に迷いがないし、その取り組みも真剣になれるのです。それで長財布がいいと思えば買い換えるし、でなければ今の財布を使い続ければいいだけ。

実際、私の友人でアフリカでの貿易ビジネスで年商300億円という起業家がいますが、彼の財布は見るも無残なボロボロの二つ折りタイプ。彼いわく「だってまだ使えるじゃん。なんでわざわざ買う必要があるの?」だそうです。

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