相撲協会はどうするべきだったか? 武田邦彦集中講座『日馬富士事件と日本(3)』

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◆私たちの心に暴力的な感情が1%でもある限り「暴力団」は無くならない

日本には指定暴力団というのがあります。反社会的な団体で、犯罪人を多く抱えていることが特徴ですが、法律で「暴力団」という名前の団体の存在を認めているところがすごいと思っている人も多いようです。

日本には昔から「やくざ」という職業のような身分のようなものがあり、外国にも「マフィア」「ギャング」と呼ばれる一群の人たちがいます。かなり前にある人が私に「先生、暴力団という暴力という名前が付いた団体を国が認めているのはおかしいんじゃないですか?」という質問を受けたことがあります。

このことをまず人類学と社会学的に考えてみたいと思います。

私たちは、植物(たとえば野菜)や動物(豚など)を殺して食料を得ないと死ぬという動物です。つまり、他の命をいただいて自らの命を保つという宿命を背負っています。また、人間以外の動物の「正義」は「強いこと」であり、暴力で秩序を保っています。

人間が「果物」を食べてビタミンを得なければならないのは、私たちの祖先がサルだったことによります。つまり、私たちの体や性質は非常に強く人間に進化する前の動物の影響を受けていて、それは精神面でも同じです。

だから、人間が暴力的犯罪を犯すことを完全に無くすのはなかなか難しいのです。今回の日馬富士の事件でも「礼儀を教えるために暴力をふるった」と矛盾したことを言っていますが、この論理は「動物的」とも言えます。

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