賃上げなきインフレ時代がやってくる?/フランチャイズ起業に成功はあるか?~午堂登紀雄の「フリーキャピタリスト入門」



フランチャイズ起業について

読者様からご質問をいただきました!ありがとうございます!

内容はこちらです。

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自分で考えたゼロイチの起業ではなく、フランチャイズ起業についていかが思われますか?

よくフランチャイズは本部が儲かるだけだ、や、本当に儲かるならなぜ直営ではないのか?(つまりフランチャイズは儲からない)のような論調があります。ただ、本部によるノウハウ・集客・経営の教育、さらに時間を買うといった観点や、ゼロイチ起業よりミドルリスク・ミドルリターンな点から総合するといかがでしょうか?

また、おすすめの業界や注意点がありましたら教えて頂けますか?ミニストップでフランチャイズ社長を御指導してきたご経験からもアドバイス頂けたら嬉しいです。

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そうです。私は17年前までコンビニのミニストップ本部で5年間勤務していました。

コンビニ1店舗出すのに、3,000万から5,000万ほどかかります。それを自前で出店するには資金も時間もかかります。銀行から借りるのも限界がある。

しかしFC方式でオーナーを集めれば、短期間に店舗網を拡大できます。すると、仕入れのパワー、物流の効率化など、規模のメリットが大きくなるからです。

また、本部は東京だけれども、北海道や九州でもビジネスチャンスがある。しかしそこまで遠くまで手はかけられないという場合、FC方式なら広く店舗網を張り巡らせることができる。

地元の土地勘や人脈があるのはやはり地元の人なので、そういう人に任せよう、など。たとえばトヨタ自動車の販売店なども、たいていその土地の地元の名士の企業が営んでいます。

なのでFC加盟社は儲からないということはありません。ただし本部は絶対に損しないようなビジネスモデルを作りますから、加盟店が儲からなくても本部はそこそこ儲かるという構図があることは確かにそのとおりです。

かつては詐欺的な本部もあり、FC事業での直接的な詐欺ではありませんが、バルチックカレーは経営者が逮捕されましたね。

https://matome.naver.jp/odai/2135911063851948701

ただ、さすがに最近は評判がネットで出回ってしまうため、こうした本部はあまり見られなくなっています。

つまり、本部は損しないとはいえ、加盟店が損をすれば撤退されますから本部にメリットはない。それに加盟店が儲かれば本部はもっと儲かるので、加盟店をぞんざいに扱うことは少ないでしょう。

そこで結論から言うと、業種業態によってはアリです。

たとえば学習塾などは有名ブランドのフランチャイズのほうが強く、聞いたこともないようなFC塾では開業しても結局は自分でチラシをまくとか、苦労しそうです。しかしこれが「明光義塾」であれば、それだけでブランド力があり、信頼できる。「公文」という看板があれば、親も内容がわかり、安心できる。

実際、私の知人に広島で学習塾のFCに加盟し、5店舗以上に拡大して成功している社長がいます。

彼はその後、教育の経験を活かし、フィリピンで語学学校も設立しています。私もその語学学校に通いました^^

というふうに、FCで学んだノウハウを他の業態開発に活かせる、というメリットはあるようです。

スポーツジムのFCに加盟し2店舗を経営している知人は、「立地が重要であり、駅前の一等地を借りられたのは本部のおかげ」と言っていました。

立地が決定打となる業態の場合、そんな物件情報を探したり交渉したりするノウハウを本部が持っている、というケースもあるようです。

また、別の知人はブランド品買取店のFCに加盟して奥様に運営を任せていますが、かなり儲かっていると言っていました。これなども、

・全国的な知名度があるチェーンゆえに、顧客は安心して店内に入ってくれる。

・査定システムが整備されているので、素人でも簡単に値付け・買取ができる。

・優良物件(店舗)を探してくれる。

というメリットがあるそうです。彼は2店舗目の出店を考えているそうです。

目線として重要なのは、認知度向上のための広告宣伝投資や商品開発投資をどれだけしているかです。

「家庭教師のトライ」などはTVCMを積極的に打つなど、広告宣伝に力を入れています。

一方フランチャイズオーナーの募集は積極的なのに、肝心の集客に力を入れていないFC本部はたくさんあります。「サポート体制充実」と言いながら、集客が厳しいと「チラシをまきましょう」といってそのチラシ作成代が本部の収益源になっているとか。(もちろん、デザイナーを探して文面を考えデザインしてもらい、印刷業者を探して印刷してもらうという手間を省けるわけですが)

「定期的な研修制度あり」と言いながら、参加は実費とか。

商品開発という意味ではたとえば以前、車のキズを直すリペアの資料請求をしたことがありますが、リペア手法や使う溶剤・ペイントなど、ほぼ昔のままで進化が見られません。外食の場合では新メニューの開発頻度が少ない、技術革新が少ないとか。

本部のサポート体制が充実していることをアピールするFCチェーンもあります。ただ、そのサポートの中身と有効性は調査しておく必要があります。

たとえばコンビニの場合、SV(スーパーバイザー)が週に2回ほど店舗を訪問してサポートしますが、だいたい本部からの連絡事項の伝達とそのチェックがメイン。

なのでコンビニオーナーはあれこれと指図されますから、独立心の強い人にとってはいちいち面倒かもしれません。

もちろんオペレーションの統一性や一貫性はチェーンとしてのブランドを維持するために必要なので、本部があれこれ言うのはやむをえないですが、これでは雇われ経営者的だなあと感じたこともあります。

しかしコンビニは長期の休暇も取りづらく、その渦中で働いていた身としては、なかなかしんどいなあという印象でした。

これは外食チェーンも同様で、外食は特に接客クレームなどが口コミ・ネットで広がりやすいし、食中毒でも起こせば一発アウト的なリスクがあるので、本部はうるさくチェックするほうがむしろ健全かもしれません。

また、オープンまではいろいろやってくれても、オープン後はめっきりサポートが減り、結局は自分で何とかしなければならないのが通常で、サポート体制の充実度というのは実態はあまり役に立たないなあというのが私の印象です。

それと、収支シミュレーションは疑った方がよいと思います。初年度からなぜそんなに集客できるの?売上が立つの?その根拠は?というものが結構あります。

専門サイトのアントレにはたくさんのFC情報が掲載されています。

https://entrenet.jp/

https://www.fc-hikaku.net/

しかし、たとえばエステサロンやマッサージは、時間をかけて認知度が高まり固定客がついていく業態ですから、初年度からそんなに売上が立つのはおかしい、と感じます。私も以前エステサロンをやって撤退したことがありますので。。

個人的には、ゼロから自分で試行錯誤しながらやったほうが起業の地力がつく、つまり成功の再現力が養われ、ほかの事業に参入するときもハードルなく取り組める。

私もすべて自前でやってきたからこそ、何に参入するにもまったく怖くないし、成否の判断がある程度の確度でわかる。

また外食など、初期投資が大きく手間もかかるものほど、自分でやったほうがよいと思います。たとえば厨房設備や店内造作、調理器具などの相場感覚は、自分で合見積もりを取ったり実際に発注したりしないとわからない。

これでは他の業態に転換あるいは進出するときに必要な経験が獲得しにくいのではないでしょうか。

もっとも、たとえば天丼「てんや」などのようにブランド力があり、「職人不要の調理システム」という独自のオートフライヤーを採用し、アルバイト店員でも品質が落ちないようにシステム化されているなど、個人では導入が難しいオペレーションノウハウが得られる、というチェーンもある。

あるいはそば店やカレー店は立地が最優先で、美味しくなくても場所さえ良ければそこそこはやります。好立地を押さえられるならFCでも個人経営でもどちらでもいい。

ラーメンは味さえよければ客は探してでも来るので立地はさほど重要ではなくなり、FCかどうかもあまり重視されないとか。

フランチャイズのほうが有利とすれば、

・個人ではとても得られない・会得には大変な時間がかかるような特殊なノウハウが必要な業種

・ブランド力・知名度がものを言う業種

・店舗開発・仕入れなど、本部の力量があるからこそ有利な条件で開業できる業種

・他にはない独自の商品・サービスを持っている本部

・将来性のある業界

という業種業態でしょうか。

将来性や安定性という観点では、教育・介護・買取・ハウスクリーニングといったところかもしれません。

しかもいずれも初期投資がそれほど高くない。初期投資がかさめば失敗したときのダメージが大きく、再起が難しくなります。

1,000万投下してダメだった、というのと50万投下してダメだったというのはかなり違いますからね。たとえば先ほどの塾ビジネスも、最近は動画配信がメインで講師の採用が不要で教室だけ用意すればいいというところもあるようです。

FCに加盟すれば成功するなんていうのは幻想で、それは成功の方程式ではない。だから私個人としては、よほど確信がある場合を除き、限りなく初期投資もランニングコストも低く、が鉄則だと思っています。

FC加盟は試行錯誤の無駄を省いたり、オープンにこぎつけるまでの時間を短縮するために活用するという発想で、依存しない、頼りすぎない、信用しすぎないで、あくまでも自己責任という姿勢で取り組むことです。

あのセブンイレブンでも出店と撤退を繰り返しているわけですから、FCパッケージそのものが成功を約束されたわけではなく、リアルな事業であり競争なのです。

前提としては、まず自分の成功イメージを思い浮かべ、その達成のために、「それは本当に自分が情熱を注ぎたいビジネスなのか?そしてなぜFCなのか?FCでないといけない理由はあるのか?」を問うことが必要です。

私もコンビニにいたとき、リストラされた、早期退職したがまたサラリーマンは嫌だ、だからコンビニに加盟したというオーナーを数多く見ました。

しかし、「何が何でもコンビニをやりたいんだ!」という情熱がなく、「なんとなく儲かりそうだから」「なんとなく自分にもできそうだから」で入ってきた人は、確か十数年だったと思いますが契約更改時で辞めていきました。それほど大変な仕事だからです。これは外食も同じで、自分がなじみがあるから蕎麦屋開業、で失敗する人も少なくないようです。

ほかにも、会社員はいやだ、人間関係も面倒だ、という人が、前述のリペアやリフォーム、あるいはテイクアウト食品などひとりでできるFCに加盟することがありますが、これも肉体仕事で大変。

もちろん、気軽な感じで始めてみたら意外なほど儲かって楽しくなった、というケースもあるのは確かです。前述の奥様がブランド品買取店FCに加盟した人も、そのパターンです。かつて携帯電話ショップをやっていた人もそう言っていました。

とはいえやはり、好きでなければ続かないし、好きでもない仕事で独立起業というのは、あまり幸せではないような気もします。土地勘がなければうまくいかないときに将来の展望が見えずに絶望しやすいですし。

なので、たとえ途中でFC本部が倒産しても自分は独力でもやるんだ、というくらい情熱を持って取り組めるビジネスが望ましい。

前述のバルチックカレーも、本部のバルチックシステムが倒産しても屋号を引き継いで経営している人はいます。きっとカレー屋をやることに誇りを持っているのでしょう。(あるいは借金があって引くに引けないとか。。)

そこでたとえば、そのFCに加盟している人で、売上が良い人と、悪い人の両方から話を聞いてみると、実態がわかると思います。(FC本部が売上悪い人に会わせてくれるかはわかりませんが)

そして、たとえばその業界でしばらくアルバイトをするなど裏側を知って、それでも「やりたい」という情熱が確認できてからでもよいように思います。

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