「実物資産投資ってどうよ?」 ~実物資産の正しい考え方と活かし方~俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編 Vol.46

「実物資産投資ってどうよ?」

~実物資産の正しい考え方と活かし方~

 こんばんは。俣野成敏(またのなるとし)です。

《『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』が11刷!》

 2015年11月の発売以来、1年半が経ちましたが、この2月に「9刷」、3月に「10刷」、そして今月に「11刷」と、3ヶ月連続での増刷となりました。

 これも版元の日本経済新聞出版社さん、そして当メルマガを購読し、応援してくださる皆さまのおかげと感謝しております。この場をお借りしまして、厚く御礼申し上げます。今後とも変わらぬご愛顧を、どうぞよろしくお願いします。

 さて。

 先史時代の頃より現代に至るまで、黄金は常に多くの人間の欲望を引き寄せてきました。おそらく光り輝く黄金は、万物に恵みをもたらす太陽をイメージさせ、崇拝の対象とされたのでしょう。古来、黄金は神に通じる神聖なものと考えられていました。古代の王は神の遣いとして、また神の声の代弁者として、金を身にまとうことによって、自分の地位を正当化していました。

 金は柔らかくて加工しやすく、しかも錆びずに色あせなかったため、時の権力者によって愛され、珍重されてきました。その貴重さゆえに、金は紀元前の頃から貨幣として使われ始めます。ですが初期の頃は物々交換の代わりというよりは、宗教的な意味合いの方が強かったようです。金の代わりに一般的な貨幣として流通したのは、主に銀や銅でした。また金属以外の、牛や穀物なども貨幣の代わりとして、交換経済では使用されていました。

 交換貨幣の中でも特に金属製の貨幣は腐らず、一定の価値を保蔵できたため、盛んに使用されるようになります。しかし重くて大量には持ち運べないことや、摩耗の問題などがありました。

 そこで、次第に貴金属の代わりに、それとの交換を証明する債務証書が代わって取引されるようになります。これが紙幣の始まりです。紙幣は古代エジプトやローマなどでも使用されていたと言われていますが、それを証明できるものは今のところ発見されていません。

 現在、確認できる紙幣は、中国の宋代(960~1279年)に四川地方で発行された交子(こうし)と呼ばれる民間紙幣が最古のものです。当時の中国は政治的には政変が続いていて不安定でしたが、経済は成長を続けていました。特に南シナ海を中心とした貿易が経済の発展に寄与し、流通の拡大が貨幣の需要を後押ししました。こうして1023年、中央政府によって世界初の正式な紙幣が発行されました。ヨーロッパでは1661年にストックホルム銀行が発行した銀行券が最初だと言われています。

 紙幣は、もとが貴金属の証書という性質上、何らかの裏付けを必要としました。それが金本位制です。金本位制とは、紙幣の発行元(国)が発行額分の金を保有し、いつでも紙幣と同額の金との交換を保証するものでした。金で裏打ちされた紙幣を兌換紙幣と言いますが、それは結局、そうしなければ世の人々が紙幣を信用して使ってくれなかったことを意味します。

 金本位制が崩れたのは、1971年にニクソン大統領によってアメリカの金兌換停止が発表されたことによってでした。以来、今でも「金本位制に戻そう」という意見は根強くあります。現在の通貨は信頼性が脆弱で、多くの国が多額の債務を負っているからです。

 たとえ他国の通貨を受け取るのは嫌でも、おそらく金を差し出されて受け取らない人はいないでしょう。そういう意味では、金こそが、誰もが価値を認め、欲しがり、受け取ってくれる「貨幣」だと言えるのかもしれません。



【Vol.46『実物資産』目次】

〔1〕イントロ: 最近のアメリカ情勢と相場への影響

〔2〕本文:「実物資産投資ってどうよ?」~実物資産の正しい考え方と活かし方~

1、「実物資産で資産を増やす」は正しい選択なのか?

 ◎金融資産とは何か?

 ◎金融資産と実物資産の違いとは?



2、なぜ富裕層は実物資産を買い漁るのか?

 ◎本当にアートやヴィンテージは開かれた市場になったのか?

 ◎実物資産のデメリットは流動性が低いこと



3、「守り」と「攻め」を区別する

 ◎「儲かるから買う」ばかりが投資ではない

 ◎資産1億円未満の人が実物資産と付き合うには



4、金投資には、どういうモノがあるのか?

 ◎金を購入したい場合

 ◎金を使用した金融商品



5、実物投資を考える際の注意点

 ◎実物資産は手を抜くと価値を下げる

 ◎「早く安く」の大きな勘違い



6、現金を「モノの資産」に置き換えたものが実物資産

 ◎資産は、動かすのも容易ではない

 ◎現物資産には「鑑定眼」が必要



7、「価値」とは何か?



★本日のワンポイントアドバイス☆★

 投資をする際、考慮すべき3つの分散

〔3〕次回予告(予定):企業が人を採用する基準とは?~来るべき「人材争奪戦」に備える~

〔4〕今週のQ&Aコーナー:「儲かるビジネスの4原則」に基づき、今、始めるべき事業とは?

〔5〕ニュースのビジネス的着眼点:成功したビジネスモデルが足を引っ張る難しさ

〔6〕編集後記:知りたくないことほど「早く知る」ことが大きな差を生む 



◆〔1〕イントロ:

 最近のアメリカ情勢と相場への影響

 ニクソンショックと呼ばれる金兌換の停止後、金の価格は世界のいろいろな情勢から影響を受けるようになります。それまでは1オンス35ドルの固定相場だったものが、以後は上がり続け、2010年代に入ると1000ドルを突破。

現在は1200ドル前後での取引となっています。

安全資産の金にマネー流入 トランプ政策 期待感の後退

 アメリカの中央銀行に相当するFRB(連邦準備制度)は(2017年)3月15日、昨年12月に続いて政策金利を0.25%引き上げました。これによって、現在の金利は0.75%~1%となっています。通常、金利が上がればその分、通貨の魅力が増してドル高になるのが普通ですが、マーケットではすでにFRBの利上げを織り込み済となっていたため、当局より「今後の利上げはマーケットの予想よりも緩やかになる」との示唆を受けて、逆にドル安へと転じました。

 米労働省が発表した3月の雇用統計によると、景気動向を映すとされる非農業部門の雇用者数が前月比9万8000人増となりました。しかしこの増加幅は、市場の事前予想18万人を大幅に下回る結果であり、20万人を超えていた過去2ヶ月に比べて急減速しています。とはいえ、3月の失業率は4.5%と10年ぶりの低水準となっており、悪天候も影響していると考えられることから、「雇用改善は依然継続中」と判断されます。

 4月6日、アメリカは化学兵器の使用が疑われる攻撃で多数の死傷者が出たとして、シリアの空軍基地に対して巡航ミサイルを発射。これによって、中東情勢が緊迫化するとの見通しから、安全資産としての金の需要が高まるものと思われます。この攻撃によって、原油先物取引が続伸、金相場も一時、昨年11月以来の高値をつけました。

 このように、原油や金はもともと米ドル建てとなっているために、特にアメリカ情勢の影響を受けやすいという特徴を持っています。

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