【他人をバカにすることで生きる男たち――⑱なぜ、女性リーダーにはスキャンダルがつきまとうのか?】
(前号から続いています)
男性優位の組織では、ごく少数の「有能な」女性だけをピックアップしても、女性全体が活躍する組織的変革を引き起こす突破口には決してなりません。
それが“女性活躍”と狼煙を掲げながら、ニッポンが“女性が活躍できない国”を抜け出せない理由です。
野次馬たちは、彼女たちの「○○」を待ち構えているのです。(注:○○の答えを考えてみてください)
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トークンとしての女性には、常に羨望のまなざしがつきまとい、それは彼女の一挙手一投足を捉え、ゴシップの格好のネタを探します。
あのときもそうでした。
ノーベル賞級の大発見だ! 割烹着だ!どこそこの指輪だ!、と大騒ぎしたマスコミ。
挙句の果てに行きついたのが、下劣なバッシングの数々です。
きかっけは、小保方氏の「失敗」でした。
論文に使用されたデータが間違っているとの指摘が相次ぎ、「不正」なのか「不適切」なのかと、国境を越えた議論となった。
そこで日本のマスコミのまなざしが追ったのが、小保方氏のプライベートだったのです。
不倫だのなんだの、タクシーの運転手の証言だの、芸能人でもなければ、政治家でもない。
単なるいち研究者のプライベートを、その真偽もあやふやなまま露骨に書き立て「ホラ、みたことか」とつるし上げた。
週刊誌の見出しや内容には、同じ女性として憤りを感じました。
つまり、女性の優位性は「最初の失敗をするまで」という期限付き。
一度でも失敗が露呈した途端、
これって、倫理的にどうなのよ?
研究者としてどうよ?
と「正義」という名の嫉妬が無限に広がり、総攻撃が始まるのです。
ときにマスコミは、人間の中に潜む闇の感情を引き出す“悪の装置”と化します。
と同時に、世間の人たちの“闇”を匿名化し、消費させる都合のいい装置であることを皮肉にもあの事件は証明しました。
女性である小保方氏を担ぎ上げた男性の研究者たちは、「目立つ」ことは監視されることであり、トークンとしての女性にはプライバシーが存在しないことを、肝に命じる必要がありました。
正々堂々と主張できる論文を徹底的に仕上げ、「この女性に突つかれて困ることはないか?」と、仕事以外にまで気を配らなくてはならなかった。
「ホラ、やっぱり女だからね」と、周りから言われないように。この言葉がトークンだけに向けられたものではなく、彼女を盛り立てた「男」にも向けられているとうけとめなきゃ。
だって、その失敗で、せっかくの「1」が「0の社会」に逆戻りするのです。
似たようなことは、あの大企業でもおこりました。
トヨタ自動車初の女性役員となったジュリー・ハンプさんが、麻薬取締法違反容疑で逮捕された事件を覚えていますか?