ホンモノとニセモノを見分ける方法(下) ~日本と海外の金融事情~
こんばんは。俣野成敏(またのなるとし)です。
当メルマガのVol.26「今週のトピックス」の中で、現在、老齢年金を巡って全国で裁判が起こされているニュースを取り上げました。
現在、世界でも例を見ないほどのスピートで少子高齢化が進んでいる日本。影響はさまざまなところに及んでいますが、中でも特に問題になっているのが「年金」です。
現在、日本の年金制度は賦課(ふか)方式という仕組みがとられています。これは「自分が支払っているお金が、現在の受給者に支払われる」ような形式のことです。本来は、「自分で積み立てたお金を、将来自分がもらう」という積立方式にできればいいのですが、それをするためには、現在の受給者に支払うための財源が別に必要となります。
1970年時点では、現役世代約9.8人で高齢者1人を支えればよかったため、賦課方式でも少ない負担で済んでいました。ところが2010年時点では、高齢者1人に対して現役世代は2.8人。さらに、2050年には現役1.3人で1人の高齢者を支えるような状況になると見られています。
このままでは立ちいかなくなる年金制度を維持しようと、去年(2015年)、初めて「マクロ経済スライド」方式が発動され、年金支給額は0.9%増に抑えられました。マクロ経済スライド方式とは、現役世代の減少に対して受給者が増加しているという不均衡な状態を自動的に調整する制度のことですが、今年(2016年)は物価上昇がほぼ横ばいで、賃金も減少したため、発動が見送られています。
マクロスライドは物価が下落しているデフレ環境下では行わないというルールがあり、8年の間に発動されたのは1度だけです。予定通り07年度から実施していれば、年金の支給水準は現役世代の平均収入の54%程度に抑制できるはずでしたが、現在は62.7%と高止まりしたままになっています。この状態を是正するには、制度を改正する必要があります。
もともと公的年金には、賃金や物価の上昇分を反映して、毎年支給額を増やしていくという仕組みが備わっています。しかしこれをこのまま続けていると、減少する現役世代が保険料を負担しきれなくなり、制度自体が崩壊する危険性があります。年金財政が大幅に悪化するのを避けるためには、いずれにせよ何かしらの手を打たなければなりません。
上記に添付したニュースによると、今国会より「年金カット法案」の審議が始まっています。これが成立すれば、年金支給額が大幅に減額されることになりますが、ここまでお読みいただければ、この流れがもはや不可避であることはお分かりだと思います。
こうした現状を踏まえて、僕らはどう行動すべきなのでしょうか?
【Vol.28『ホンモノとニセモノを見分ける方法(下)』目次】
〔1〕イントロ:
僕らを待つ「現実的な未来」
〔2〕本文:
ホンモノとニセモノを見分ける方法(下)~日本と海外の金融事情~
1、どうやって「300人もの従業員」を動かせばいいのか?
◎念じているだけでは、お金は増えない
◎最初のビジネスは、普段の延長線上で始める
2、組織をまとめるリーダーに必要なもの
◎「共通の目的」が、他人を動かす
◎理想を実現するにも「お金」がいる
3、海外と比較した日本の金融ビジネスの環境
◎「日本人である」という価値
◎金融ビジネスを行う場合、日本にいては不利になる
4、日本は世界の金融業界の末端に過ぎない
◎本社が代理店化している日本の金融業界
◎日本から世界の金融商品にアクセスする方法はある
5、真の成長のために必要なもの
◎「金融」に目覚め始めた日本人
◎もはや「依存」が通用しない時代
6、「人事を尽くして天命を待つ」
◎いい結果を得たければ、そうなるように行動する
◎プロは、必ず「プロ」の意見を聞く
7、人生を変えるための秘訣
★本日のワンポイントアドバイス☆★
◎投資商品の正しい選び方4項目
〔3〕次回予告(予定):
ブラックファイナンスって何?
~投資をする上で避けて通れない騙しの手口~
〔4〕セミナーのご紹介:
「質のいい情報」を見分けるには?
〔5〕今週のQ&Aコーナー:
不動産所得とサラリーマン所得を損益通算する方法とは?
〔6〕今週の気になるトピックス:
1、ミステリーツアーならぬ「ミステリーチケット」の登場
2、お金の安全な置き場所ってどこ?
〔7〕編集後記:
ライザップに学ぶビジネスの広げ方
◆〔1〕イントロ:
僕らを待つ「現実的な未来」
文頭で、日本の年金制度を取り巻く現状についてお伝えしました。
これから日本では、年金に対する現役世代の負担が年々重くなっていきます。すでに年金の支給開始年齢を67歳に引き上げる案が検討されているところですが、近い将来、70歳にまで引き上げられるのは間違いないでしょう。そうなった場合、どのような未来が考えられるのでしょうか?
現実的に、年金が70歳からの支給開始にズレるとすれば、それに合わせて「定年も70歳になる」というのは、十分ありうることです。そうしなければ、年金が開始されるまでの間に、生活できなくなる人が続出する可能性がありますから、国は是が非でも企業に協力を求めるはずです。
実のところ、今の制度をご覧いただければおわかりのように、多くの企業は実際の定年を60歳から65歳に引き上げたわけではありません。会社は「60歳定年」はそのまま動かさずに65歳までを「再雇用」という別枠とし、希望者全員が65歳以上まで働くことのできる企業の割合は47.9%に過ぎません。
再雇用が普通の雇用とどう違うのかというと、給料が現役時代の半分ほどになり、役職も一切なくなるパターンが一般的です。今まではこの状態を5年だけ我慢すればよかったのが、定年が延びればそれが「10年続く」ということです。
「役職を一切解かれる」とは、組織のラインから外れることを意味します。そうなると考えられるのは、
(1)上司が年下になる
(2)現場に戻らないといけない
・・・という2つの状態です。
「自分の組織を持たない」のは、60歳にして「個々の生産性を求められる」プレイヤーに逆戻りすることを意味するのです。
この状態で、果たして10年間はつらつと働けるのでしょうか?これが、僕らを待っている運命なのでしょうか?
このような未来を変えるためには、お金の勉強が必要です。「国も、会社も当てにせず、自分の年金は自分でつくる」こと。これが、自分の運命を変える唯一の手段なのです。
※復習用にどうぞ