入試過去問の効果的なやり方

志望校合格に向けてのラストスパートが始まり、家庭学習として過去問演習を開始する時期になりました。中学入試勉強の総仕上げともいえる過去問演習ですが、使い方次第でその効果が大きく違ってきます。今回は、効果的な「入試過去問の効果的なやり方」についてお話ししたいと思います。

家庭学習として過去問演習を組み込んでいくのですが、取り組む時期によって、重きを置きたいポイントが異なります。9・10月を前半、11・12・1月を後半として、2つの時期に分けて、それぞれ詳しくお話ししていきましょう。

〇9・10月

この時期の過去問演習の目的は「弱点対策」です。合否判定に使うのではなく、あくまで、「正解すべきなのに、まだ正解できない問題の種類とレベルを把握するため」に取り組んでください。

取り組む方法は次の通りです。

① まずはそのまま解いてみましょう。(試験時間通り、または+10分)

② 〇×を付けます。

③ ×の原因を詳しく調べましょう。

 ・単純ミス(読み間違い、書き間違いなど)

 ミスをなくす日頃の行動の型を見直す。例えば、問題文のポイントになるところに鉛筆で線を引いたり、「単位の確認」や「求める答えは〇〇だ!」と必ずチェックする習慣を付けたりしてみましょう。

 ・解き方や知識を忘れて、解けなかった。

 その問題に限ったものだけでなく、類似の問題に関連して、あいまいになっている解き方や知識がたくさんあるはずです。この場合は、学習をし直す必要が出てきますから、どのテキストや資料を使って、どの問題をどれだけ、いつごろ復習するのかを決めなければなりません。

 ・さっぱりわからなかった。

 合格者でもまず正解できない「捨て問」なのか、それとも合否に関わる「できていなければいけない問題」なのかを見極めます。また、大問ならば、全てを解くことは難しくても、小問の(1)だけは解けるようになれば、+5点できるというように判断することが大切です。

ここで、注意しておくことがあります。それは、「理想を追わない」ことです。合格最低点がギリギリの到達目標です。この時期の過去問演習では、合格最低点を大きく下回る結果が出るのはよくあることです。これもできたら、あれもできたらと望んでいけばキリがありません。例えば、速さの問題ができなかったときに、対策するために次々と問題をひっぱりだしてくれば、お子さんの負担が増えるだけで他教科を含めた学習バランス全体がくずれてしまいます。速さの問題の中で、「ダイヤグラムで解く問題」は無視して、「速さのつるかめ算」だけは解けるようにしよう。このように焦点をしぼり込んだ対策を心がけてください。「実現可能な対策」はお母様だけで判断するのは難しいかもしれません。塾の先生にお願いするか、家庭教師や個別指導の先生にアドバイスを求めていきましょう。

〇11・12・1月

 受験勉強の総仕上げの時期になりますので、「なりふり構わず、どの教科でもいいからプラス20点」を目指していきましょう。より実戦的な過去問演習になっていきます。

この時期の過去問演習の目的は、

① 時間配分の練習

② 捨て問の見つけ方練習

③ 問題文のくせに慣れる

④ 試験時間最後の10分の使い方

⑤ 空きスペースの利用の仕方を練習

といったところでしょう。

① できるかぎり4教科を連続して解いて、常に4科合計の点数を意識しながら解いてください。例えば、「国語で失敗しちゃったから、理科でプラス10点を目指すぞ」といった具合です。また、問題数が多いのか、少ないのかといったところから始めて、「比較的解くのが楽な問題から順に並んでいるので、まずは前から順に解いていこう」とか、「始めの方に、手間のかかる問題がいつも出題されているので、時間を取られすぎないように気をつけよう」、「最後の方の難しそうな大問でも、(1)は簡単なことが多いから、時間切れにならないよう、先に目を通しておこう」というような具体的な作戦を立てていきましょう。「ここら辺まで解いたら、だいたい〇〇分ぐらいかかる」という時間感覚もつかむようにしてください。

② ①に関連していますが、問題配列やよく出題される単元の問題の難易度から事前に予想できる場合もあります。試験が始まったら、問題全体にざっと目を通して、解けそうな問題から取り組む習慣をつけましょう。

③ 学校ごとの作問者の問題文の癖があります。語尾の「~を求めよ」「~求めなさい」といった違いや、算数の問題文中の登場人物が「Aくん、Bさん」と「秋男くん、夏子さん」の違いでも、問題文が読みにくくなったり条件を取り違えたりするものです。

④ 試験時間内で全問解き終わって、もう一度ゆっくり見直す余裕はなかなか難しいでしょう。時間がない中で、どうしても解けそうにない問題に長い時間をとられてしまうのはもったいないですね。残り10分を切ったら、そのような問題は見切りをつけて、すでに解き終わった問題(計算問題や一行問題)をもう一度見直す時間にあててみてください。問題文を読み直すところから始め、残してある図や式や計算を見直していきます。そうすることで、普段やりがちな計算ミスや読み落としに注意をはらうようになります。正しく修正できれば、簡単に得点を上げることができます。

⑤ 市販の過去問集では紙面の編集の都合でほとんど余白らしい余白はありません。が、本番の入試問題は、余白がたっぷりとってあります。その余白に、図や式や計算を、ミスを誘発しない読みやすい字で書いていく練習をしてほしいのです。過去問演習の際には、「一部の学校で配布されている昨年の問題」や、一部市販されている「過去問そのままコピー」を利用すると、本番さながらの問題用紙の使い方が練習できます。

入試直前のこの時期の過去問演習では、必ず実際の試験時間通りに解いてください。〇×を付けた後は、あとプラス20点のために、一番簡単に得点できそうな部分をピックアップしましょう。例えば、「漢字や語句」「歴史(江戸時代から現代)」「生物分野の植物」など、それほど手間がかからずに学習し直せる知識分野が効果的です。

 入試直前時期(12月中旬以降)では、苦手な科目や単元の勉強の比重を大きく増すと、順調に勉強がはかどらず、お子さん自身が焦りや不安を感じやすくなります。過去問演習のプラス20点は、「苦手でない教科」「苦手でない単元」から見つけるようにすると効率が良くなり、効果が出やすくなります。

〇最後に

 過去問演習は、中学入試には欠かすことができない大切なものです。志望校対策の最良のテキストです。しかし、得点が明らかになり、合格最低点との比較ができるということは諸刃の剣になります。同じ点数をとっても、「今さらがんばっても」と感じる子と、「もうちょっとがんばれば何とかなりそう」と感じる子がいます。この両者の差は、入試本番で大きな得点差になります。過去問演習を、子どもを励ます道具として使ってください。そして、点数が届いていなくても、×の問題の中にある、〇になる要素を見つけていってください。それが、入試直前時期の合格への極意です。