出版する方法~午堂登紀雄の「フリーキャピタリスト入門」

出版を実現するには?

前回の続きで、どうやったら本が出せるのか?というテーマです。

それはシンプルですが、「情報発信」に尽きます。

編集者はつねに新しいテーマ、新しい著者を探しています。

企画会議で「このテーマで書ける人を探せ」というワークフローの出版社もあるとはいえ、それは少数派。

また、老舗出版社の中には、著書の実績がある人でなければ採用しない方針のところもありますが、多くの編集者は新機軸を探し、著者の発掘をしています。ネットで検索したり、リアルでも会いに行ったりしています。

だから、自分の存在を知ってもらわなければなりません。

ネットにしろリアルにしろ、「自分はこういう価値を提供している」と発信を続けることです。

著者の多くが自営業だとか会社経営者というのも、本人が売っている商品・サービスがあり、それが誰かの役に立っているから。

私の周囲で出版を実現する人も、情報発信していたら、先方から問い合わせがくるというパターンがほとんどです。

もちろん、たとえば三崎栄一郎さんとか小山龍介さん、原尻淳一さんのように、会社員のときから出版している人もいます。

それも彼らが当時からプライベートでセミナー、勉強会、読書会などのイベントを主宰し、そこで情報発信をしていたからです。

そこにネタを探している編集者が参加してきて、「おもしろいことをしてるね」「本を出さないか」と誘われる。(ただ、会社員で出版を継続すると、周囲のやっかみに嫌気がさし、退職・独立する人がほとんどです)

編集者に出会う方法はそう難しくなく、誰かの著者の出版記念パーティーなどに参加してみることです。

そこでは必ず担当編集者が来ていますから、名刺交換してメールの交換など、交流を絶やさないことで、時間が経ってから「何かないですかね」「一度情報交換しませんか」となることもあります。

もちろん、「人の役に立つコンテンツ」を持っていることが前提ではありますが、そうやって出会いから始まることもあります。

いまの私もそれは続けており、知人友人の出版記念パーティーに招かれたら、必ず編集者に挨拶します。

その後、情報交換を兼ねて打ち合わせしましょうということになり、書籍の企画の話になっていきます。そのとき生きるのが前回でも書いた「タイトルだけ企画書」です。

私の場合も、最初の1冊目はメルマガからです。自分の投資経験をまぐまぐのメルマガで発行したところ(当時は会社員だったのでペンネームでした)、たまたま編集者が購読してくれていて、数か月経ったころ「メルマガの内容を本にしませんか」とオファーがあったのがきっかけです。

それがたまたま売れたため、「2冊目を書きませんか」と言われて出したらこれもたまたま売れた。

そこから、ホームページ経由で多くの出版社からオファーがあり、ビジネス書作家という仕事が加わったのです。

だからまずは「自分は何者でどういう価値を提供しているか」を発信し、探してもらえるようにしておくこと。そして、自分に問い合わせできる窓口を作っておくことです。

学者とか圧倒的な実績がある人なら自分メディアがなくても出版可能ですが、そうでない一般の私たちにとって、事業をしている人は自分のホームページ、そうでない人でもブログはマストです。

自分が本を出せることをアピールするには、「その本を読んだ読者は、いったい何がうれしいの?」「その本を読むメリットは何?」に答えられる準備をしておくことです。

同時に、「類書と何が違うのか?」という自分なりの特徴を考えておくこと。どんな本でも、たいていは競合となる先発書籍がありますから、差別化できるポイントや切り口が必要です。

今連載している「私のリーダー失格記」も、他とは違う方向からの企画です。

というのも、ほとんどの上司本、リーダーシップ本は、優れた実績のある立派なリーダーがその成功体験を、いわば上から目線的に書いています。だから実績やノウハウだけ見れば、私などがリーダーシップ本を出すような資格はない。

しかし切り口を変えて、「自分はこれで失敗した。だから私のようにならないよう、こうしてはどうか」という、下から目線の本は少ない。

それが逆に現場で苦労している管理職に響くのではないか、ということでGOサインが出たというわけです。

むろん、成功体験の乏しい自分では説得力に欠けるため、それを補える文章力とか、これまでの本が売れた実績が評価された、という理由もあるとは思いますが。

いずれにせよ、そんなふうにアプローチや切り口を工夫すれば、さほどすごい実績があるわけではない個人でも、出版の可能性は十分あるのです。

「自分には縁がない」と思ってしまえばそこで思考は停止しますが、「おもしろそう」と思えば脳が実現に向けて動き出します。

出版は確かに簡単ではありませんが、イメージほど難しいわけでもありません。

言うまでもなく、出版が実現すれば一気に全国区となって集客にもつながるうえ、講演や雑誌の取材など、活躍の幅が広がります。

それになにより親が最も喜んでくれますから、ちょっとした親孝行になります。特に田舎ではテレビに次いで周囲から賞賛されるので、親の鼻も高いというものです。

私のリーダー失格記

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