他人をバカにすることで生きる男たち――⑯「なぜ、男社会でセクハラが蔓延するのか?」

【他人をバカにすることで生きる男たち――⑯「なぜ、男社会でセクハラが蔓延するのか?」】

前号から続いています)

「男性vs女性」というコンテクストで考えるのでなく、コミュニケーションの問題と考えると解決の糸口がみえることがあります。



それでも疑問は残る。

なぜ、男たちは「だから女は……」的発言を、つい口走ってしまうのでしょう?

さしたる悪意もなく、普段はジェントルな人であっても、「個」ではなく「女」を意識するのか?



その答えは「環境」にあります。

オッサンが悪いわけでも、オバさんが悪いわけでも、ない。

その「環境」にこそ問題が潜んでいるのです。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ここに私がバイブルにしている一冊の本があります。

タイトルは「Men and Women of the Corporation」。

日本語に訳すと「企業のなかの男と女」。書いたのは、企業コンサルタントとしての経験を持つ、米ハーバード大学院ロザベス・モス・カンター教授です。

1977年に出版されたこの本は、徹底して社会学の基本に忠実な方法論を用いて書かれた一冊で、20世紀初頭からアメリカで活発になっていた「フェミニズム運動」に新たな視点をもたらしました。

当時の米国の企業は、管理職は男性、事務職は女性といった具合に、性別分離状態がきわめて厳格。ダイバーシティやワークライフバランスの概念も浸透していない時代です。

ただ、役職に性差が生じているのは「男は仕事、女は家」という古典的性役割意識だけではなく、「女性は管理職にむかない」というのが、常識とされていたのです。



つまり、

「女性社員には責任感が乏しい」

「仕事をすぐ辞める」

「高い地位に昇ろうという意欲を持たない」

「女性は感情的 にふるまいがち」―――。

だから「管理職には向かない」のだと。



一方、男性は

「アグレッシブ」

「高い地位を得ようと闘いつづける性癖がある」

「冷静な判断力と統率力に長けている」―――。

だからリーダー的地位には「男性が望ましい」。



この「女性の悪い特徴」「男性のいい特徴」は、本当なのか? 

こう突っ込んだのがカンター教授です。

だって、実際にカンターが外部コンサルティングを勤めていた「インダスコ社」には、女性管理職がいたのです。

もちろんごく少数で、多くは男性です。

「でも、本当に女性の悪い特徴が管理職に向かない理由なら、彼女たちはなぜ、例外になれたのか?」

その謎を解くためにカンターは、「インダスコ社」のトークン(象徴)としての「女性」の存在に着目し、エスノグラフィー調査を実施。5年という歳月を費やし、徹底的に社会的コンテクストにこだわり、分析した。

その結果わかったのが、「人は環境で変わる」ということ。

「人は環境で変わり、人も環境をつくる」という、まさしく健康社会学的結論にいたったのです。

具体的にお話しましょう。

記事の新規購入は2023/03をもって終了しました