「あなたの家はどのタイプ?」~我が家にふさわしい家計管理法とは?~俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編 Vol.101

 こんばんは。俣野成敏(またのなるとし)です。

 組織とは「人が2人以上集まってできている、ある目的を持って協働している集団」のことを言います。であるならば、「家族は組織の最小単位」だという意見に異論を挟む人はいないでしょう。家族を大切に思わない人はいませんが、日常を一緒に過ごしているだけあって、悩みもまた深いのが家族なのではないでしょうか。よく「同じ釜の飯を食う」などと言いますが、1つの家計で生活を共にするのは、文字通り苦しみも喜びも共にする、ということを意味します。

 人が組織を形成した時に、必要となるのがマネジメントです。世界的な経営学者のP・F・ドラッカー博士は、かつて著書でこのように書いています。

「他の人間をマネジメントできるなどということは証明されていない。しかし、自らをマネジメントすることは常に可能である。そもそも、自らをマネジメントできない者が、他人をマネジメントできるはずがない。マネジメントとは、模範となることによって行うものである」(P・F・ドラッカー『経営者の条件』)

 家族は自分にもっとも近しい存在であるがゆえに、期待や失望も大きくなりがちです。しかし家族といえども、結局は自分とは別の人間である、ということを受け入れる必要があります。そういう時に、このドラッカー博士の言葉が参考になるのではないでしょうか。



【Vol.101『3つの家計簿管理法』目次】

〔1〕イントロ: “帳簿”が国家の盛衰をも左右するという事実

〔2〕本文:「あなたの家はどのタイプ?」〜我が家にふさわしい家計管理法とは?〜

1、家計を管理する3つの方法とは

 ◎どうして家計管理はうまくいかないのか?

 ◎家計を任されたほうは、それだけ負担も大きくなる

2、相方がリテラシー音痴の場合はどうしたらいいのか?

 ◎個別会計は、全体像を把握しにくい

 ◎共同管理はコミュニケーションがカギ

3、必ずしも変えなくてもいい

〔3〕次回予告(予定):「名言から投資の極意を学ぼう!」

〜ジム・ロジャーズ氏が日本びいきのわけ〜

〔4〕編集後記:あなたは「ここぞ」の場面で使える奥の手を用意していますか?

〔5〕今後の特集スケジュール:2018年8月予定

◆〔1〕イントロ:

“帳簿”が国家の盛衰をも左右するという事実

 家計というと、これまではもっぱら家庭の主婦の仕事、というイメージがあったかもしれません。戦後の日本では、「男性が会社に行って働き、女性が家で家事と子育てを行う」という役割分担が長く続いてきました。当時はそれが、もっとも効率的なシステムだったのでしょう。けれど今は時代が変わり、共働きでなければ家計が立ちいかない世の中になりつつあります。

 “家計簿”という単語を聞くと、「1枚1枚レシートと帳簿を付け合わせ、電卓を叩いて『合わない』などとやるのはせせこましい」と思われる方もいるでしょうが、実はこれはとても大切な作業です。家計簿は会計学の中では単式簿記に属しているものの、複式簿記を採用している会社の予算や国家財政に至るまで、規模は違えども元を正せば同じものです。

 会計がいかに大事なものであるかは、国家の盛衰を見ていけば一目瞭然です。歴史を紐解けば、その事例には事欠きません。たとえばその1つに17世紀のフランスが挙げられます。当時、フランスの国王だったルイ14世は「太陽王」と呼ばれ、中央集権と重商主義を推し進めた結果、王朝の最盛期を築きます。その巨大な専制国家を支えたのが会計でした。

 ルイ14世がわずか5歳で王位に就いた当時、フランスの国家は破産寸前でした。老宰相が幼い国王に代わって国を治めていましたが、その宰相が亡くなる直前、国王に後継者を推薦します。それは、老宰相個人の会計顧問だったコルベールでした。ルイ14世は22歳になって親政を開始すると、コルベールに国庫を委ねます。任されたコルベールは、財政再建に奔走する一方、会計の知識を権力闘争にも持ち込み、政敵の追い落としにも利用しました。

 ルイ14世は当初、精力的に政務を行い、国の勢力も拡大します。しかしやがて国政に飽き、コルベールが64歳で急逝する頃には、会計を疎ましく思うようになっていました。国王にとっては、会計によって国庫の内情が明らかになるよりも、「自分は偉大な王だ」という幻想に浸っていたほうが都合がよかったわけです。会計はフランスを繁栄に導きましたが、その公正さが失われると共に国も傾き、ついにはフランス革命の遠因となりました。これが“帳簿の威力”なのです。

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