仕事をサクサク~っと猛スピードで進めるには

仕事を楽しんだり、ヒット商品を作ったりするのに必要なのは「情報が集まる人」になることです。

「何が今、流行っているか」

「競合他社はどういう方向に動こうとしているのか」

「お客様のニーズは何か」

「新しい素材にはどんなものがあるのか」

「最新鋭の工場はどんな技術があるのか」

など、商品開発に必要な情報はたくさんあると思います。こうした情報をできるだけ早く、たくさん集められる人になると、仕事や商品開発がスピードアップします。

そして、仕事や商品開発のスピードがアップすると、仕事は思いのほか楽しくなってきます。

情報源にはいろいろありますが、鮮度が高いのは、信頼できる人からの情報です。

新聞は基本的に終わったことを取材して取り上げますが、人からの情報は進行形の場合が多いのです。新聞に出る半年、あるいは1年前からコトは動いています。

極端な例でいえば、車の部品を作っている人にとって、「新しい車が販売されました」という新聞の情報を見て「そうだったのか」とわかっても遅い。

その車の開発の前段階で、キャッチしないと、部品を売り込むことはできません。

自分ひとりで集めた情報には限りがありますが、10人から情報を集めれば、情報量が10倍になります。しかも、信頼している人の頭を通過して出てきた情報ですから、精査もされています。

私もいろいろな人に情報をいただきながら、ピンチを切り抜けてきました。

赤城乳業では、コンビニへのアイスの展開が一段落すると、今度はスーパーマーケットに参入することを決めました。

ところが、スーパーマーケットでは、経費の問題上、マルチパックといわれる多数包装の商品にしないと、なかなか採算が合いません。そこで、7本入り『ガリガリ君』のマルチパックを作ることになりました。

他社のマルチパックの場合、6本入りが多いのですが、私は『ガリガリ君』を一週間毎日食べてほしいと思ったので、7本入りにこだわりました。

このマルチパックを作るには量産する体制を整える必要がありました。

しかし、それまで使っていた機械では量産が難しく、どうすればいいか、頭を抱えていました。すると、いろいろな人が、アイデアを持ってきてくれました。

そのひとりが、アイスの製造機器の型を作る人でした。

「鈴木さん、最近、高炉の中で溶接する、『ろう付け溶接』というすごい方法が開発された。これまでの方法では、アイスの型(モールド)と型の間は、どうしても2センチになっていたけれど、もっと短くできますよ」と教えてくれました。

製造部門からは、「型の間が短いと固まらないのではないか」という声も出ましたが、試しに20本だけ最新の型で作ってみました。

すると、きちんと凍結しました。

最新の型を使うと、型同士の間を詰めることができましたので、12列入っていたスペースに24列入れることができました。単純に、それまでは1時間で1万2000本しかできなかったものが、2万4000本できるようになったのです。

量産体制が整い、スーパーマーケットへの参入を果たすことができました。

この設備投資もかなりコストがかかりましたので、売れなかったら、辞表を出す覚悟でした。

ふたを開けてみると、「7本入り」は、かなりお得に見えたのでしょう。バカ売れして、翌年には2号機を作りました。だからクビにもならず、何とか今につながっています。

では、どうすれば、情報が集まる人になれるのでしょうか。簡単です。

普段から、人が持ってきた話をよく聞けばいい。忙しい時でも、人が話をしに来たら、手を止めて「何か、あった?」と耳を傾ける。たとえ、知っている情報だったとしても「教えてくれて、ありがとう」とお礼を言っておく。

そうすれば、相手は「この人はちゃんと話を聞いてくれる人だ」と思い、次も話を持ってきてくれます。

逆に、せっかく話を持ってきてくれたのに「今、ちょっと忙しいから、あとでね」とか、「そんなのとっくに知ってたよ」と言って、軽くあしらってしまうと、相手は「もう、二度と持っていかない」と思ってしまいます。

残念ながら、同期入社で一緒にスタートしたのに、数年で、「仕事がうまくできる人」「できない人」の差が出ます。この差はどうしてできるのか。まさに「人の話を聞く」か「聞かない」かが生み出しています。

ひとりの人間の情報量にはどうしても限りがある。だから人から情報をもらう。どんな人が有益な情報を持ってきてくれるかわかりませんから、いろいろな人の声に耳を傾けるようにすることです。

赤城乳業の前社長井上秀樹も人の話をよく聞きます。

相手が社員であっても、誰であっても、途中で相手の言葉を遮るということはありません。よく聞くから、社員も自由に意見を言う。前社長だけではありません。

赤城乳業には、若い社員が自由に話をする風土が根付いています。だから、活発に議論がなされ、そこから奇抜なアイデアが生まれているのでしょう。