中東の紛争には闇はあるか? 武田邦彦集中講座『日本の闇・世界の闇(6)』

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◆サウジアラビアの変革の年となった2017年を振り返る

2017年はサウジアラビアにとって大きな変革の年になりました。それと同時に、IS(イスラム国)が崩壊し、クルド人が活躍し、トルコが力をつけ、シリアが新しい段階に入り、さらにアメリカがエルサレムをイスラエルの首都と認めて大使館を移動するなど大きな変動がありました。

特にサウジアラビアでは、6月にムハンマド副皇太子が王室会議で皇太子に推戴され、それに反対した3皇子が11月に汚職容疑で逮捕されるという事件が起こりました。また、サウジアラビアには憲法がなく、コーランなどのイスラム経典を憲法とし、裁判所もイスラム法廷と通常法廷がある国なので、7世紀に成立したイスラム法で律せられています。男女の関係も「男女の機械的平等」ではなく、「男女の幸福」を追求しているので、たとえば女性の自動車の運転が禁止されています。それも昨年、廃止されました。

考えてみれば、7世紀には自動車はなかったのですから、もともと後世にできた奇妙な規則で、実は、女性がベールをかぶらなければならないとか、男女が街でデートしてはいけないというのは50年前にはなかったと言われていて、政治的には自由なイスラム社会を目指す人たちが盛んに「昔のイスラム国家」の証拠を示したりしています。

また、アメリカのトランプ大統領がイスラエルの首都をエルサレムとして大使館を移すことを発表しました。相変わらず反トランプの姿勢をとっているメディアは、一斉にトランプ大統領を批判していますが、この決定はアメリカの両院議会で20年ほど前に議決されているもので、その実施時期が大統領に委任されていただけのことです。

そして、アメリカが中東から手を引き、イスラエルは応援するという姿勢を見せたことは、中東の紛争が減ることを意味していますから、平和を望む日本人としては歓迎のはずなのに、日本のメディアも批判的に報道しています。このぐらい複雑なことになると、国際関係をよく知らないとわからないので、多くの日本人がトランプ大統領の決定を理解できないようです。

このような情勢の中で、中東は今、イラン・トルコ連合と、サウジ・イスラエル連合に分かれつつあり、南北対立の様相を呈しています。今後も、イスラエル問題、イランやサウジの問題が報道されると思いますし、それに加えて「ロシアの陰謀」「国際石油資本の陰謀」などの陰謀論がにぎやかになると思います。

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