ニューヨークにゴミ山のウソ~武田邦彦集中講座『分別は役に立っているのか?(8)』



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◆古来「焼く文化」であった日本は1つの物を大切に扱ってきた

ある読者からリサイクルに対する私の考え方に、異論があるとしてメールをいただきました。そこには、私が今までこのシリーズでは触れていないことで、かつ、日本の多くの人が錯覚していることがそのまま示されていました。

「ニューヨークの近くにピラミッドほどのゴミ山があると本に出ています。よって、リサイクルの観念は正しい。日本では、100年前からすでにやっていて、自然にその観念がありました。」

まず「事実」ですが、著者の調査ではニューヨーク近くにゴミがピラミッドほどの大きさで積んであるところはありませんでしたが、一度、激しい積雪でゴミの収集が滞ったときにある程度のゴミが山積みになっていたことがあったようです。

ゴミを減らそうとか環境を良くしようと強く思っている人は、「自分がやろうとしていることは正しい」という信念が強すぎて、事実を軽視することがあります。アメリカは国土が広く、大雑把なので、日本のようにキチンとゴミ処理をすることはないのですが、だからといってニューヨークの近くにゴミがピラミッドほどに積まれるというのは、自分の主張を通したいために事実を曲げていると思います。

第二に、だから「リサイクル」というのは論理が飛躍しすぎています。ゴミの山を処理するには、埋め立てか焼却がもっとも簡単なことは、自宅のゴミを考えてもすぐわかります。ゴミをリサイクルできると考えている人は、ゴミをよく見ていないか、ゴミの中の特定のもの(たとえば綺麗なまま捨てられる紙、まだ使えそうなプラスチック容器など)だけを見ている場合があります。

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