まず山を削ろう。「自然を守る」を誤解している日本人 武田邦彦の集中講座『国家100年の計(4)』

住みやすい国土へ

◆災害の引き金にもなりうる!?「自然を守る」を誤解している日本人

イザナギ・イザナミが日本列島をつくって以来、数1000年、日本人は少しずつ日本という国を作ってきました。もちろん、科学的には大陸の一部であった日本が徐々に大陸から離れ、多くの断片も寄せ集めて4つの大きな島となったので、日本の大知はとても複雑です。

太平洋には8000メートルから1万メートル級の大きな海溝があり、そこに海の底が沈み込んでいます。つまり日本列島は崖っぷちに立っている複雑で弱い建物という感じです。

その結果、地震はもとより急峻な崖が崩れたり、大雨で河が氾濫したり、ちょうど台風の進路に当たることもあり風水害、海の遭難なども後を絶ちません。でも、これは日本列島の成り立ちから仕方が無いことと多くの人は思っています。

でも、違うのではないか?自然というのはそれほどよく考えて作られているのではなく、地殻変動とか、偶然が積み重なってできています。そして自然は常に変化し、その変化は実にダイナミックです。

著者は名古屋に住んでいますが、現在は広い濃尾平野が広がっていて、名古屋の港から岐阜に行くには高速を使っても1時間程度はかかります。

でも今では山の方と感じる岐阜も日本列島ができてしばらくしたときには海岸線だったのです。今でも「亀島」、「津島」といった「島」のついた地名が愛知県には多いのですが、それはかつて本当に海に浮かぶ島だったのです。

愛知県には木曽三川と言われる木曽川をはじめとした大きな川が三本あり、それが山の土を削って作ったのが、現在の広大な濃尾平野なのです。海に沖積によってできたので元々の平野ではなく、だから坂がほとんどありません。自動車で走ると分からないぐらい山の方から海へわずかな傾斜が認められます。

つまり自然はかなり大きく姿を変えていますが、現在ではむしろ「自然の状態を保つ」のではなく、人工的に自然を固定しています。だから頻繁に崖崩れが起きたり、天井川ができたりします。かつては上流の山が削られて急峻な崖がなくなり、山の土が麓に流れて低地に土砂が流れ込み、浸水するような低地が無くなっていたのですが、それが人工的に固定されるようになったのです。

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