兄弟は似るのか? 武田邦彦集中講座『家族の科学(1)』

Shutterstock/ERainbow



◆生命誕生の38億年前から考察―「兄弟」とはどういうものなのか?

あるテレビに出演していたら、視聴者の方から「うちの子供は兄弟仲が悪く、喧嘩ばかりしている。兄弟なのになぜ仲良くできないのだろうか?」という相談がありました。兄弟ですから、同じ親から生まれ、歳もそれほど離れていませんし、さらに同じ家で生まれてからずっと一緒の生活をしているのですから、顔かたちばかりではなく、考えも似ているはずなのに…というのが親御さんの悩みでもあったのです。

そこで、私は兄弟とはそもそもどういうものなのか、ということからお話を始めました。

地球に生命が誕生したのは今から38億年ほど前なのですが、それからずっと、「オスメス」という区別はなくて、単性でした。だから仲間はいましたが、基本的には一匹で暮らし、自分が長生きする、あるいは自分の一部を切り取って、それから別の自分を誕生させるということをしていたのです。

でも、15億年ほど前に成層圏にオゾン層ができ、太陽からくる光のうち、放射線や紫外線という危険な光がシャットアウトするようになると、地表の生物はより快適になるとともに気候や餌なども大きく変動することになったのです。

たとえば人間は外気温が26℃でもっとも快適にできていて、10℃にでもなれば下手すれば凍死します。つまり、生物はたとえば細胞膜が脂でできていますが、その脂には融点(凍る温度、溶ける温度)があり、完全に凍ってしまうと膜を通して何も通らなくなるし、反対に溶けてしまうと細胞の形を保つことができず、これも死んでしまいます。

人間なら、寒くなれば服を着て、家に入り、必要なら暖房をつけるということができますが、原始の生物はいわば常に裸ですから、気温の変化には弱いのです。

さらに、体も小さいので、つねに餌を食べられれば良いのですが、何日か餌が得られなければ、餓死してしまいます。つまり温度の変化、食物の変化に特に弱かったのです。

そんな環境の中で、生物は生き残るためにオスとメスに分かれ、自分の持っている遺伝子を二つに切って接合させるという両性生殖をするものが生まれたのです。自分が26℃の環境でしか生きていけないため、もしも遺伝子を二つに切って接合した新しい生命(子供)なら、危機を乗り切ることができる可能性があるからです。

この試みは見事に成功し、しばらく経つと多くの生物が単性生殖から両性生殖になりました。

記事の新規購入は2023/03をもって終了しました