変化する新入社員の意識と現場での育成

 今年も、「シューカツ」と呼ばれる就職活動、企業側からみると新卒採用活動がひと段落し、内定式も終了。来春には新入社員が入社してきます。一口に新入社員といっても、さまざまな業界・企業で人材育成コンサルティング・研修に携わる中で、また、青山学院大学をはじめとして様々な大学での講義を通じて感じるのは、新入社員の二極化が進んでいることです。1つは、就職、働くこと、キャリアに対して非常に意欲の高い層で、もう1つがそういった意欲が高くない層です。

■意欲が高い層の3つの傾向とは

意欲の高い層の中では、3つの傾向が見られます。

 まず「プラネタリウム型視点」。新入社員の世代はインターネットの進化とともに育ったので、ネット空間の中で著名人や有名なビジネスパーソン、若手ベンチャー起業家といった人たちと比較的身近にコミュニケーションをとることができます。プラネタリウムの空間では、肉眼では見えない遠い星や星座がきれいにくっきり見えます。そのような感覚で、キャリアの目標や、ロールモデルをネット空間の中で見ているきらいがあるのです。つまり、自分の会社の先輩や上司が、著名人や若手ベンチャー起業家などと比べると色あせて見えてしまうわけです。

 次が「せっかちスキルアップ症候群」。彼らは、キャリアに対して非常に意欲が高くて、ネット空間の中で著名人などを身近に感じてしまっているので、与えられた仕事が地味に映りあせるわけです。会社側としては、まずは簡単な定型業務など仕事の基礎体力をつけさせるために指示したことが、新入社員にとっては、「こんなことをしていて成長できるのだろうか」というあせりになってしまうわけです。仕事の基礎体力をきっちり鍛えることにかける時間を惜しがる傾向があります。

 3つめが「会社に冷めた手負いの獅子族」。この傾向の特徴を示すような興味深い調査データを紹介します。1つは「2016年度新入社員・春の意識調査」〈日本生産性本部〉で、「それなりの理由があれば、1~2度の転職はしかたがない」と答えた新入社員が48%もいます。これは、中高年層のように終身雇用を信じ会社に滅私奉公していた感覚と全く異なり、会社に対して冷めてしまっている。したがって、会社に依存せず、自分でキャリアアップを図る、自己投資して勉強する傾向が強まっているといえます。



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