女王様のご生還 VOL.240 中村うさぎ
「うさぎ図書館」で「他人をコピーしたがる人間」について書いたが、虚言者の中にも似たタイプが存在する。「他人の人生を自分の人生として語る」タイプだ。彼らはべつに他人の言動をコピーするわけではない。ただ、他人の人生や他人の所有物(資産や地位や経験など)を借用するのだ。20年ほど前、新宿2丁目で知り合ったゲイの青年がいた。彼は私を見るとぐいぐい近づいて来て(私はこういう人が苦手である)、「ちょっと...
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「うさぎ図書館」で「他人をコピーしたがる人間」について書いたが、虚言者の中にも似たタイプが存在する。「他人の人生を自分の人生として語る」タイプだ。彼らはべつに他人の言動をコピーするわけではない。ただ、他人の人生や他人の所有物(資産や地位や経験など)を借用するのだ。20年ほど前、新宿2丁目で知り合ったゲイの青年がいた。彼は私を見るとぐいぐい近づいて来て(私はこういう人が苦手である)、「ちょっと...
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施設に入った母の件で、父とド派手な喧嘩をした。母の施設では基本的に衣食住の世話をしてくれるのだが、その他はオプションで別料金というシステムらしい。「施設があれこれ別料金サービスを提案して来て、俺から金を絞り取ろうとするんだよ」電話の向こうの父の声はこのうえなく不機嫌そうだった。「まったく、嫌になるよ!」「たとえばどんなサービスがあるの?」「まぁ、アレだ。月に1回か2回、医者による健康診断とか...
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夢を見た。友人が膝の上のノートパソコンを眺めながら、私に言う。「中村うさぎのエッセイが面白くないっていう書き込みが、ものすごい数、殺到してるよ」それを聞いた私は別に驚く事もなく、きわめて冷静に、「そりゃそうでしょ。自分でも面白くないって思ってるもん」こう答えたところで目が醒めた。あまりにもリアルな夢だったので、しばらくの間、それが夢なのか現実にあった事なのか、よくわからなくて混乱していた。そ...
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アン・ネヴィルの人生は、まるでジェットコースター並みに起伏が激しい。ヨーク家の重臣として権勢をふるっていたウォリック伯の娘として生まれた頃は、周囲からチヤホヤされるお嬢様。しかしその後、父のウォリック伯が敵方のランカスターに寝返ってヨークに反旗を翻したため、ヨーク家からすると憎き裏切り者の「逆臣の娘」となった。ウォリック伯はランカスターとの絆を深めるためにアンをエドワード王太子に嫁がせたため...
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薔薇戦争の陰で暗躍した女たちを取り上げているが、今回はリチャード3世の妻アン・ネヴィルに焦点を当てたい。シェークスピアの「リチャード3世」には、アンがリチャードに口説かれる印象的なシーンがある。当時、アン・ネヴィルは未亡人であった。赤薔薇のランカスター家と白薔薇のヨーク家が王位を巡って殺し合った薔薇戦争で、彼女は夫であるエドワード王太子(ランカスター家)を失ったのだ。その悲しみに暮れる彼女に...
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庶民出身という低い身分から国王エドワード4世の王妃となったエリザベス・クレイとは、どんな女性だったのだろうか。ひとつ確実なのは、彼女がかなりの美人だったという事である。彼女がエドワード4世に見初められたきっかけは、戦争で失った土地を返して欲しいと王に直訴した時だと言われている。当時そのような訴えは少なからずあっただろうが、彼女の低い身分を考えると王が耳を貸す確率などほとんどゼロに近かったに違...
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「うさぎ図書館」の方でリチャード3世を取り上げたので、こちらでは少しその補足を。2012年にDNA鑑定された彼の遺骨から、興味深い事実がいくつか判明した。ひとつは、かなり余談になるのだが、俳優のベネディクト・カンバーバッチがリチャード3世の子孫であると結論づけられた件である。以来、ベネディクト・カンバーバッチを映画やドラマで見るたびにリチャード3世を思い出してしまう私であるが、カンバーバッチ...
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うさぎ図書館の方で60年代のキリスト教的禁欲主義について触れたので、こちらでは「禁欲の功罪」について私の意見を書き綴ってみようかと思う。諸君、禁欲とははたして「美徳」なのであろうか?多くの宗教が「禁欲」を旨とするのは、それだけ人間が欲深く罪深いからなのだろう。確かに我々は欲のために他者を犠牲にしたり、平気で殺傷をしたりする生き物だ。だから「欲」を「悪」とみなす気持ちは、まぁ、わからないでもな...
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「うさぎ図書館」の「ハウス・ジャック・ビルト」について書いた原稿で、「表現はどこまでの自由を許されるか?」という問いに触れた。 たとえば、ジャックが建てた「死体の家」は許されるのか? 私の個人的意見を述べれば、死体で作った表現物は不謹慎ではあるものの、それはあくまで「不謹慎」という曖昧な道徳観の問題であり、法的に禁止したり制裁を加えたりすべきものではない。 ただし、そのために表現者が殺人を犯...
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「いのちの電話」とかいう自殺防止のためのコールセンターがある。自殺しようか迷っている人がそこに電話をかけるといろいろと話を聞いて相談に乗ってくれて、最終的には自殺を未然に防いでくれるそうだ。私は電話した事がないのだが、いったいどんな人がどんなアドバイスをしてくれるのか、昔からものすごく関心がある。しかしまぁ興味本位で電話なんかしたら申し訳ないし、今のところ思いとどまっているわけだが、死ぬまで...
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